団長だって、女の子 ページ1
空はオレンジ色に染まり、私の体も夕日に照らされ紅く染まる。
雄大で美しい景色とは裏腹に、今の気分は最悪だった。
疲れ果てた身体を庭のベンチに投げ出し、息を吐き出す。
「はあぁ…」
先程のアリーナでの事だった。
ひたすらにタンクからのダメ出しがすごかった。
足が遅い私と、ガンナーと、ドアなしタンク。
仕方が無い。足が遅いし武術家なんて、デッキに入れていないもの。
実際大して強くはないし、自陣とタンクを守るのに精一杯だったって言うのに。
『アタッカー』『だめ』
『ガンナー』『味方ナイス』
…クソにも程があると思わない？
何もしてない人に、そう言われたくない。
私だって頑張って体制を立て直そうとしているのに。
私が前線行ったらアタッカーだめで？自陣で守ればアタッカーだめで？
一体何をすればいいのよ。
…逆に言えば、何もしていない人にそう言われるほど、自分の力は落ちたということなのだろうか。
「…最悪」
1人で夕日にあたり私は一体何をしているのだろう。
なんて…、なんて惨めなの。
…悔しい。
「っ！」
パサリ、と頭の上から何かが掛かる。一瞬で視界が暗くなった。
手で触れば、ふわふわのファーみたいな感触。その腕にまとわりつく、青いリボン。
「…なによ、これ」
思わず口に出る言葉に返ってきたのは、頭に乗っけてきた大きな手と、背後から聞こえる嫌味ったらしい言葉だった。
「アリーナで大負けしたらしいな」
「うるさいわね」
「で、タンクにめちゃくちゃ言われたんだってな」
「……っ」
唇を噛む。そんなこと、あんたなんかに言われたくない。
目を伏せ、手のひらをぎゅっと握りしめた。
「…っ、どうせ、私は」
「いいんじゃないのか。そんな輩の言動なんか深い意味などないだろう」
優しく私の頭を撫で始めたあいつの言葉は、何故か頭の中に木霊した。
「だから、その…、気にするな」
ぶっきらぼうに言うあいつに言い返そうとして。
私は、口を開いた。
「…っ、バッカ、じゃないっ、の…っ！」
つっかえつっかえの自分の声。溢れては頬にこぼれ落ちる涙に、もう、訳が分からなくなっていた。
『気にするな』
私はこの言葉を待ってたのかもしれない。
ぎゅっと彼のコートを握りしめ、顔を隠すように下げる。
それでも止まない撫で続ける手に何を思ったのか、涙は一向に止まりそうになかった。
「うぅっ、…っ、ぐすっ、…ふっ、」
次も。次もダメだし食らってしまったら。
…また、慰めてもらおうかしら、ね。
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作者名：煉 | 作成日時：2018年1月15日 18時
