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第三話 ページ4

「南海、すごかったね!」
「KZ?…うん、確かに凄かった」

奏と私しかいない教室を、真夏の夕日がオレンジ色に染め上げる。
教科書やノートを鞄に突っ込みながら、私はあの試合を思い返していた。

結局、KZは試合で相手チームに大差を付けて勝利した。
特に大きかったと思うのは、小さい男の子______若武君のシュートと、その若武君を支える二人_______黒木君と上杉君のサポートだ。
三人とも、ほんとに仲が良くて、試合中は真剣で、鳥のようにサッカーコートを走り回る姿。
奏やほかの人達が夢中になるのも無理はない。思い返すたびにため息が出るほどだもの。

「南海、見て」

窓辺に寄った奏が、何かを発見したようだった。私に声をかけてくる。
鞄を自席に置き、ゆっくりと窓際まで行く。覗き込むようにして見下ろすと、そこには、夕日に照らされたKZの姿が見えた。

「うわぁ…」

つい、声が出る。なんというか、威圧感が本当に凄いのだ。

「黒木君達、いないね。ここの学校広いから、迷ったのかな」

奏が不安そうに呟く。
その時奏の携帯から、電子音が鳴り響いた。スマートフォンを取り出し、確認した後、奏は少し悲しそうな表情になった。

「あぁ、もうお迎えが来ちゃったみたい。…ごめんね南海、先帰るね」
「うん。気を付けてね」

荷物を肩にかけ、艶やかな黒髪を軽く揺らしながら、彼女は手を振って速足に去っていった。
私は彼女が消えた扉を見つめ、小さくため息をついた。

奏は有名な財閥の一人娘。そう、財閥の令嬢で、超金持ちだ。
この前に一回だけ奏の家に遊びに行った時は、家まで車に乗らなきゃいけないとか、『奏の部屋』ではなく、『奏の家』があるとか、とにかく顎が外れそうな位驚いたものだ。
当然学校の行き帰りもおっきなリムジンを優雅に使っている。毎朝満員電車で通学している一般庶民の私と大違いだ。
先ほどの電子音も、お迎えに来たという合図、らしい。

私はもう一度ため息をつきながら窓辺を離れ、教科書の入った鞄を肩にかける。後ろの扉を静かに開け、オレンジに染まった廊下に一歩、足を踏み出したときだった。

「あぶねーっ!」

瞬間的に足が止まる。廊下をスライディングするかのように私の足元に滑り込んできたのは、あのKZの前衛にいた小さい男の子、若武君だった。
唖然として硬直する。目をぱちくりしていると、若武君が一言、ぼそりと呟いた。

「白と水色のストライプ、か…」

私は速攻で彼を蹴り飛ばした。

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めくりん - とってもおもしろいです!!次の話が楽しみです! (2019年3月21日 15時) (レス) id: 01167813ca (このIDを非表示/違反報告)
ヤナ - 更新首を長くして待っています。う〜んつづきがきになる〜〜( ^ω^ ) (2017年12月9日 14時) (レス) id: 09cbcea487 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - 更新頑張って下さい。 続きがとっても気になります!! (2017年11月18日 17時) (レス) id: abec708dd4 (このIDを非表示/違反報告)
恋檬(プロフ) - こーーーしーーーんーーー!待ってるねー! (2017年10月22日 23時) (レス) id: a868e82522 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - あの・・・・更新頑張ってください!(同じ「桜」として応援しています!) (2017年10月14日 21時) (レス) id: a8498e2e89 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年6月4日 18時

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