第二話 ページ3
「……う、わぁお」
私の学校は私立の中高一貫校で、校舎も広い。
そんなわけで校庭もテニスコート、サッカーコート、グラウンド、野球場などと様々ある。
中でも私の学校はサッカーの強豪で、サッカーコートの周りにファンが応援できるよう、『応援ブース』みたいなのがぐるっと囲ってある。その周りに、高等部が建てられている。
そんな豪勢なサッカーコートは試合もよく行われるのだ。
が。
「奏。…帰っても、いい?」
……ここまで満員なのは初めてだ。中学の見学に行った時も入学してからも流石に見たことない。
正直どうでもよかったが、ここまで人気だったのか、KZは。
混雑が嫌いな私は奏を見て懇願するが、奏の悲しそうな表情に負けてしまい。
狭く、夏ということもあり、制汗剤やらなんやらの匂いを立ち込めた暑苦しい応援ブースで試合を見ることになった。
人数としては圧倒的に女子が多いが、ちらほら男子の姿も見える。
周りからフィールド上に目を戻したその時だった。
「KZが来たぞー!!」
誰かの叫びの通り、ユニフォームを着たサッカーチームが出てきた。その瞬間に一気に黄色い悲鳴と歓声が上がり、思わず私は耳を抑えた。
ああ、頭が痛くなっていく…。
暑さ、熱狂するファン、そしてそれに伴う歓声と耳鳴り。クラクラして今にも倒れそうだ。
正直馬鹿みたいだと思うけど、奏のためだし仕方ない…。
隣で瞳をキラキラと輝かせる奏を見つつ、私は、フィールドに目を戻した。
「___________っ」
息が、止まった。
銀色の縁なし眼鏡。その奥にある、透き通った瞳。白い肌。長い四肢。
きっと、この瞬間から恋していた、と思う。
私には、すごく、眩しく見えた。
「ねぇ!いた!いたよ黒木君っ!キャー!!!黒木くーん!」
奏が大きく私の横で騒ぎ立てる。
私は、その彼の光景に見入っていた。
背の高い黒髪の男の子が、観客に向かって手を振っていた。その隣で、眼鏡の男の子が何かを言って、二人で笑い合っている。そこに、背の小さなパワフルな男の子が突っ込んできて、眼鏡の彼とじゃれ合っていた。三人とも、とても仲が良さそう。
「南海!黒木君いたよ!」
奏がそう言っているのも聞こえず、私はひたすら、あの三人を見ていた。
奏が不思議そうに私を見る。
「……南海?」
夏の熱い太陽が、名も知らない彼の眼鏡に反射して、キラリと光り輝いた。
まだ夏は、始まったばかり。
私に、心地よい風が体中を巡って通り抜けていった。
9人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「探偵チームKZ事件ノート」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めくりん - とってもおもしろいです!!次の話が楽しみです! (2019年3月21日 15時) (レス) id: 01167813ca (このIDを非表示/違反報告)
ヤナ - 更新首を長くして待っています。う〜んつづきがきになる〜〜( ^ω^ ) (2017年12月9日 14時) (レス) id: 09cbcea487 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ - 更新頑張って下さい。 続きがとっても気になります!! (2017年11月18日 17時) (レス) id: abec708dd4 (このIDを非表示/違反報告)
恋檬(プロフ) - こーーーしーーーんーーー!待ってるねー! (2017年10月22日 23時) (レス) id: a868e82522 (このIDを非表示/違反報告)
桜(プロフ) - あの・・・・更新頑張ってください!(同じ「桜」として応援しています!) (2017年10月14日 21時) (レス) id: a8498e2e89 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:桜 | 作成日時:2017年6月4日 18時