焼却を望む画家 (ページ10)

今日:43 hit、昨日:104 hit、合計:3,373 hit

九話ページ10

理事長室の前の廊下で青とピンクの二人の生徒とすれ違ったが、全く気付かれることは無かった。扉をノックして入室許可を貰うと、エイトはルティフィを横抱きしたまま中に入る。

「失礼します」

「よく来たね！イフリート先生にルティフィちゃん！相変わらず仲がいいね！！夫婦仲が良くて嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「あれ？もしかしてルティフィちゃんの制服、イフリート先生の特性だったりする？」

「お気づきになられましたか、流石は理事長です」

「とーぜん！！だって僕〜君たち夫婦のファンだかね！！あ、動かないでね！！写真撮るから！！」

教師の(籍は入れたがまだ子供である)妻が生徒として入学。何やら色んな意味で問題がありそうだというのに簡単に入学出来た理由はひとえに、”サリバンがイフリート夫妻のファンだから！！”である。

エイトとルティフィの結婚が決まった時、それはもう両家の身内たちからは批難の嵐であった。当たり前である、何せルティフィが元祖返りになったのだから。ピクトゥーラの一族からはルティフィの処分の話も出たほどだ。
どうしようもない事態に陥った彼等に救いの手を差し伸べたのが、たまたま事態を知ったサリバンだ。サリバンは両家とも古くから親交あった。しかもそれだけでは無い。ピクトゥーラ一族にとって彼は数多くいる支援者の一人である。
ピクトゥーラの一族は代々高位の悪魔の肖像画などを描いてきた絵描きの一族で、当然、消失の魔王デルキラの肖像画も手がけた。今でこそ写真という便利なものがあるが、常に新しい刺激を求めながらも古き伝統や掟を重視する悪魔たちにとって肖像画の類はここぞという時に重宝される。故に、ピクトゥーラ一族は高位悪魔の支援者が数多くいる支援者の大半を占めていて、サリバンもそのうちの一人だ。
さらにさらに、エイトがバビルスに教員として就職が決まっていたことも大きいだろう。おかげで今回の結婚についての情報をいち早く知ることが出来たのだから。

サリバンが初めて二人を見た時、それはもう胸がキュンキュンときめいて思わず”あら可愛い”と口にしてしまい、SDであるオペラに冷たい目で見られた。仕方ないだろうと、当時のサリバンは叫ぶ。
周りからどれだけ罵詈雑言を浴びせられようと、相手の悪い噂を流されて別れさせようとしてきても、お互いを信じ、お互いを愛す。これは正しく”純愛”！！
サリバンは真っ直ぐな綺麗さに、かつて魔王と共にあった自分達を懐かしんだ。