五話 ページ5
視界いっぱいに広がる紫の炎と、愛おしい”旦那様”。気が付いた時には炎に包まれて、旦那様に抱き上げられていた。私達を包み込む炎はまるで、陽だまりの中にいるように暖かい。きっと、旦那様が温度調節をしてくれているのだろう。旦那様の角と私の角が触れ合って、旦那様は優しい笑みを浮かべている。
「ルティフィ」
『〜〜〜〜っ!!』
熱を含んだ声に名前を呼ばれて、身体に雷に撃たれたように電撃が走る。鼓動が今までにないほど早く刻み、体を巡る血液がその速さに目眩を起こして、頭に溜まる熱に沸騰してしまいそうだ。
「僕の名前を呼んで」
『な、まえ……』
「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はイフリート・ジン・エイト。世界でたった一人のキミだけの夫だ」
『イフリート・ジン・エイト……』
「そう。僕の名前をしっかりと刻み込んで。僕だけを見て、僕だけを求めて、僕だけを愛して」
『もう、私の全ては旦那様のものです』
「!、はは、嬉しいことを言ってくれるね」
『だから、』
「ん?」
『だから、旦那様の炎で私を燃やしてくれますか?』
そう嘆願すると、旦那様は目を見開いて口がぽかんとあいて閉じるのを忘れてしまった。さっきまでは大人の妖艶な雰囲気を醸し出していたのに、今は少しだけ幼く見えて、そのギャップに胸が打たれる。暫くして笑いだした旦那様の愉しそうな笑顔も私の思考を全部奪うには十分な威力だ。
あぁ……私という悪魔はもう、底知れぬ深淵に堕ちてしまった。深く深く沈むように、止まることを忘れて堕ちていく。私はもう、戻ることは決して叶わない。
永遠が一瞬にも感じる中、ひたすら笑う旦那様に見惚れながら返事を待つ。それだけで応えは分かっていたのだが、やっぱり言葉にしてもらうのが一番でしょ。
ようやく笑いが止まった旦那様は真剣な顔で私を見つめて、次の瞬間には視界から消えていた。
『ぇ……』
〈バッシャーーン〉
旦那様が消えるのと同時に包んでいた炎も消え去って、何かが水に叩きつけられたような音とが響く。私の目の前には金色に輝く格子が現れて、私は牢の中に入れられていた。
ーーっ邪魔をされた!!
目の前で、あと少しで手に入るはずだった
ここから、私の記憶はなくなった。
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名無し - めちゃくちゃ好きです!!!!!!!!!!!!!更新頑張ってください! (4月28日 11時) (レス) id: fc92663274 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暇潰し | 作成日時:2024年3月10日 22時