検索窓
今日:19 hit、昨日:57 hit、合計:3,406 hit

五話 ページ5

視界いっぱいに広がる紫の炎と、愛おしい”旦那様”。気が付いた時には炎に包まれて、旦那様に抱き上げられていた。私達を包み込む炎はまるで、陽だまりの中にいるように暖かい。きっと、旦那様が温度調節をしてくれているのだろう。旦那様の角と私の角が触れ合って、旦那様は優しい笑みを浮かべている。


「ルティフィ」

『〜〜〜〜っ!!』


熱を含んだ声に名前を呼ばれて、身体に雷に撃たれたように電撃が走る。鼓動が今までにないほど早く刻み、体を巡る血液がその速さに目眩を起こして、頭に溜まる熱に沸騰してしまいそうだ。


「僕の名前を呼んで」

『な、まえ……』

「あぁ、自己紹介がまだだったね。僕はイフリート・ジン・エイト。世界でたった一人のキミだけの夫だ」

『イフリート・ジン・エイト……』

「そう。僕の名前をしっかりと刻み込んで。僕だけを見て、僕だけを求めて、僕だけを愛して」

『もう、私の全ては旦那様のものです』

「!、はは、嬉しいことを言ってくれるね」

『だから、』

「ん?」

『だから、旦那様の炎で私を燃やしてくれますか?』


そう嘆願すると、旦那様は目を見開いて口がぽかんとあいて閉じるのを忘れてしまった。さっきまでは大人の妖艶な雰囲気を醸し出していたのに、今は少しだけ幼く見えて、そのギャップに胸が打たれる。暫くして笑いだした旦那様の愉しそうな笑顔も私の思考を全部奪うには十分な威力だ。

あぁ……私という悪魔はもう、底知れぬ深淵に堕ちてしまった。深く深く沈むように、止まることを忘れて堕ちていく。私はもう、戻ることは決して叶わない。

永遠が一瞬にも感じる中、ひたすら笑う旦那様に見惚れながら返事を待つ。それだけで応えは分かっていたのだが、やっぱり言葉にしてもらうのが一番でしょ。
ようやく笑いが止まった旦那様は真剣な顔で私を見つめて、次の瞬間には視界から消えていた。


『ぇ……』

〈バッシャーーン〉


旦那様が消えるのと同時に包んでいた炎も消え去って、何かが水に叩きつけられたような音とが響く。私の目の前には金色に輝く格子が現れて、私は牢の中に入れられていた。

ーーっ邪魔をされた!!

目の前で、あと少しで手に入るはずだった(旦那様)は蒸発して水の無くなった池で座り込んでいる。ゆっくりと旦那様を投げ飛ばした男が旦那様の傍に近寄り、私の前にはキンキラキンの髪を持った老人が立って何か言っているが、何も聞こえない。

ここから、私の記憶はなくなった。

六話→←四話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
52人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

名無し - めちゃくちゃ好きです!!!!!!!!!!!!!更新頑張ってください! (4月28日 11時) (レス) id: fc92663274 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:暇潰し | 作成日時:2024年3月10日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。