焼却を望む画家 (ページ20)

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十九話ページ20

次々に生徒達がゴールに到着する中、サリバン様の孫だという特待生と体の大きな生徒だけが一向に戻ってこない。彼らを待っている間はただただ暇なので、私は袖から落書き帳と鉛筆を取り出して風景画を描いている。

「………………ぇ」

「…………ねぇ」

「……ピクるん！！」

『わっ！？』

ただひたすらに目の前のキャンバスに向かい合っていると、思わぬ後ろからの衝撃で鉛筆を落としてしまった。首に腕が回されていて後ろから抱きしめられていることが分かる。目線だけ後ろに向けると、そこには頬をめいいっぱい膨らませた緑の悪魔がいた。

「やっと気付いた！！もーーピクるん全然こっち見てくれないからぎゅーしちゃったよ！！」

『えっと……』

「あっこら貴様！少しはじっとしておれんのか！？」

『貴方はアスモデウス家の……それと……？』

「あぁ、自己紹介がまだだったな。私はアスモデウス・アリス。そこの阿呆はウァラク・クララだ。邪魔をしたようですまない」

『いえ、お気になさらず。気付かなかったとはいえ結果的に無視していた私が原因ですので』

「そう言ってもらえると助かる」

「ねぇねぇピクるん。さっきから何描いてるの〜？」

『あの、質問に答える前に一つだけよろしいでしょうか？』

「なになに？」

『そのピクるん？というのは何でしょうか』

「ピクるんはピクるんだよ！デビ可愛いでしょ！！」

『えっと……』

「だから、ウァラク貴様！！迷惑をかけるなと言っているだろう！？」

「アズアズうるさい〜」

「何！？」

「アスモデウス！ウァラク！貴様ら喧しいぞ！！」

「わ〜エギー先生怒った！」

「誰のせいだ！誰の！！」

何だか、凄く周りが煩くなってしまった。あまりの状況に思わず眉をひそめていると、視界の端で手を降ってこっちおいでと口パクする魅力的な悪魔がいた。この状況から抜け出せるならと彼女の近くに移動する。

「ふふふ、大変だったわね」

『ありがとうございます。その……』

「全然気にしなくていいわよ〜。私はイクス・エリザベッタ。あなたは？」

『ピクトゥーラ・ルティフィです』

「じゃあルティフィちゃんね。ふふふ、可愛いお名前、素敵だわ」

『貴方も素敵なお名前です。もし、貴方の名前も伺ってよろしいでしょうか』

「えっ、私ですか？」

『クラスメイトになったので』

「あ……私はクロケル・ケロリ。よろしく」

『よろしくお願いします』