十四話 ページ15
理事長からその新入生のことを聞いた時は自分の耳を疑った。何せ、元祖返りの悪魔を入学させるなんて言われたのだから。この事をカルエゴ先生が知ったらブチ切れるだろうなぁと思いながら、渡された資料を確認したのを覚えている。名前の欄には”イフリート・ジン・ルティフィ”、家族構成の欄に夫”イフリート・ジン・エイト”とあり、次は目を疑ったのも覚えている。
「イフリート……?」
「あぁ、それはね。ルティフィちゃんはイフリート先生と夫婦なんだよ〜。あ、見て見てこの写真。デビ幸せだと思わない?」
「わっ本当ですね!」
机の引き出しから取り出した写真には、燃え盛る炎とむき出しの溶岩を背景に、白無垢を着た純白の美少女を記憶にある顔より少し若いイフリート先生が抱き上げて、幸せそうに笑い合う姿が写っていた。この際、妻が幼女だとかは気にしないでおく。よくよく見てみると少女の目は元祖返り特有の目をしている。
「僕にだけ話したということは、彼女はただの元祖返りではないのでしょう」
「……確かに、彼女がただの元祖返りだったら教師全員に警告くらいはしていただろうね。けど、彼女に関する情報を知る者は少ない方がいい」
「現13冠にして三傑であるあなたがそこまで警戒をするなんて。一体彼女は何者ですか?」
「ピクトゥーラ一族の覚醒者だよ」
「!!」
部屋の空気が一気に張り詰めた。たった一言、それがもたらす事の重大さ。今までの認識が壊されて、その先に待つ最悪の厄災に背筋が凍った。同時に、僕にだけ伝えられたことへの納得もいく。なるほど、敵を騙すなら味方からという訳ですか。
「でしたら、ピクトゥーラ一族が覚醒しない一族というのは……」
「もちろん、僕とピクトゥーラ一族のごく一部、そしてデルキラ様のみが知る最重要機密だよ。世間に浸透している”覚醒しない一族”というのも僕たちがちょっとした小細工をした結果。と、言う訳だけだから頼めるよね」
「承知いたしました。このダンタリオン・ダリ、全身全霊をもってして、イフリート・ジン・ルティフィの監視及び警護に務めます」
「うん、お願いね」
「……一つ、お聞きしたいことが」
「何かな?」
「万が一、いえ、億が一の可能性の話です。もし、彼女を奪われっ!?」
重い。重い重い威圧感が空間を支配する。だがそれは瞬きにも等しいほどの一瞬で消え去り、理事長は表情を悟らせない笑みを浮かべる。
「その時は、魔界が灼熱の炎に包まれるかな」
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名無し - めちゃくちゃ好きです!!!!!!!!!!!!!更新頑張ってください! (4月28日 11時) (レス) id: fc92663274 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暇潰し | 作成日時:2024年3月10日 22時