焼却を望む画家 (ページ1)

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一話ページ1

それは幼少期の時のこと。畳に寝転がりながらお絵描きをしていた私ことピクトゥーラ・ルティフィに、母上は当主様(お爺様)のいる床の間に行くように言い、二つ返事で従った。キンキラキンの髪が眩しい当主様は座りなさいと目だけで伝えて、私が前に正座すると震えながらこう言った。

「どんな悪魔と結婚したい？」

『魔界一の炎を持ってる悪魔がいいです』

即答だった。なぜなら、幼き私が抱いた野望のためにすべきことだから。たまたま初めての私の降魔の儀の日に家が火事になって、四方八方が炎に包まれた部屋に取り残された私が見たのは、自分の描いた沢山の絵があっという間に燃やされていく様。絵に込めた想い、かかった時間、最高の絵になるように頑張った努力。そして、絵が出来上がった時の達成感と、褒めてくれた家族の喜びが一瞬で燃え尽きた。燃え尽きてしまった。

けど、そんな事はどうでもいい。
想いとか、時間とか、努力とか、達成感とか、喜んでくれる家族とか、どぉーーーでもよかった。

その時私が感じたのは、心の底からの歓喜と羨望。
全てを燃やし尽くす炎に包まれて消えてく私の作品達が狂おしいほどとても綺麗で、可憐で、儚くて、同時に羨ましくもあった。私も、轟々と燃え盛る炎で綺麗に、可憐に、儚く燃え尽きたいと。
そして自覚した。これこそが、私の野心だと。

家族はさぞ困惑しただろう。助け出された娘が生まれて初めての悪周期に入って炎の中に戻りたい、私も焼かれたいと狂って暴れたのだから。それから色々あって私の野心は変わっていないが、燃やされるなら愛する悪魔の炎がいい、それも魔界一ならなお良いに考えが変わった。だって、ただただ燃やされるよりも全てを狂わす愛を持った高火力の炎に燃やされた方が、ずっとずっと最高でしょ。
それから私は”魔界一の炎を持つ悪魔”と結婚して愛されて、ゆくゆくは燃やされるために日々花嫁修業に勤しんでいる。その合間にはストレス発散のために絵を描いては燃やすを繰り返している。先程の書いていた絵はもちろん完成したら燃やす。

「………お前に見合いの話が来た」

『私は結婚するなら、』

「イフリート一族からだ」

『ィっ、イフリート一族！！”あの”イフリート一族ですか！？』

イフリート一族。それは魔界で最も火力の強い炎を生み出す悪魔の一族。そう、”最も火力の強い炎を生み出す悪魔”、つまりは私の理想の結婚相手。
その事実に私は胸を踊らせ、蕩けた笑みを浮かべた。