彼女？？ ページ37
週明け。今日も送ってもらいそびれたAは、ポートマフィア本部ビルから出ると歩いて駅へ向かった。夕食は食堂で済ませてしまったから、あとは帰るだけだ。
港は静かだ。だから余計に街がにぎわって見える。どこまでも青い海に月の浮かぶ港とちがって、ここは赤青黄、緑、オレンジなどの様々な光であふれていた。
どれもまぶしくて、それぞれが強く主張するからこそ、どの店も同じようにAには感じられる。商店街へ続く道を歩いていると、路傍に見覚えのある車を見つけた。
樋口さんだ。ちょうどよいから送ってもらおうとAは車に近づいたが、何やらキラキラした目でAの向こうを見つめているのでAはふと気になって自分もそちらを見た。
道の先に芥川くんがいた。
しかも私服、メガネ。乙女心のわかるAは察した。
そして後部座席に乗り込んだ。樋口さんはこちらには見向きもせずに芥川くんを見つめている。好きなんだなあとAは思う。
「お疲れ様です、先輩！ ご自宅までお送りしましょう！」
「ええ、よろしくおねがいするわ」
Aはドアに肘をついたままそう言った。
「はい！！ っていつの間に！」
樋口さんが驚いた様子でこちらを見た。
「どうせ自宅特定とか考えてたんでしょ」
「いけませんか」
「別に？ 私も昔やったしねえ。さすが幹部殿はいいところにお住まいだわ」
Aは笑った。
「不法侵入ですか？」
樋口さんは非難の目でAを見た。マフィアの人間がそんな目で見るなと言ってやりたい。
「人聞きの悪い。ちょっとした訓練。尾行も鍵の開け方も周りの人で練習してみないとね」
「それ信用なくなる奴じゃないですか」
「ばれなければOK」
「ばらしてます」
樋口さんはあきれたように額に手をやる。
「まぁあなたの家には行っていないから安心して」
「尾行するもなにも同じマンションですからね」
樋口さんは慣れた様子で喋っていた。芥川くん相手だと何を話すのだろうかと多少気になるところでもある。
「笹原さんってどうして幹部に昇進にならないんでしょうかね」
「え」
五代幹部とは言うけれども、太宰さんの抜けたポストが残っている。実質幹部は4人だ。
「一介の構成員の私が言うのもおかしいかもしれませんけど、笹原さんは幹部に適任だと思います」
樋口さんが嬉しいことを言ってくれる。Aはバックミラー越しにその様子を伺いながら、少し頬をゆるめた。
「早く幹部に昇進して、中原幹部と別室でお仕事をするようになればいいのになぁと思っています」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 64人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります！もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました！ (2017年5月24日 0時) (
レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い？文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さなえ@Ｌｏｖｅ伊織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時：2016年12月21日 8時
