従ふ者 ページ29
青い宝石のような目で見上げられると、つい甘やかしてしまう首領のお気持ちもなんとなく分かる気がした。彼女曰くそれも首領によるセッテイらしいが。
「仕方ないですね」
今日何度言ったかわからないその台詞を言いながらAは財布を出す。
「美味しい!」
カシャリと無機質なシャッター音が鳴ると、エリス嬢はとたんにクレープでいっぱいの頬をさらにぷくっと風船のように膨らませた。満面の笑みでその店で一番豪華なクレープを頬張る姿を写真に収めた。
「何撮ってんの」
「首領に自慢……否、報告しようと思いまして」
首領の前だと「まあまあね」とかなんとか仰るから、素直に笑っておられる姿を写真に収めようと思ったのだ。この後この写真がAの待ち受け画面を飾ることになる。
「最悪」
「ふふっ」
「やってることがリンタロウと一緒」
先ほどの子供らしさはどこへやら、テーブルの向こうから冷めた目でAを見つめる。
「それなら、はい」
Aはエリス嬢に近寄ってスマートフォンのカメラをこちらへ向けた。いわゆる自撮りである。
「これならどうですか?」
二人の顔とクレープがアップで写った写真。高校生のころはなんとも思わなかったがこの歳になるとなんとなく恥ずかしい気もする。
「……Aちゃんらしくていいんじゃない」
Aは知る由もないが、欧外のフォルダには幼いAとエリス嬢のツーショットが多く残っている。
Aも結局甘いクレープをぺろりと食べてしまった。
Aは苦いものや辛いものも好きだが、特別に甘いものには目がない。首領に報告の文と共に先ほどの写真2枚を送信するとAはパタリと携帯電話を折りたたんだ。
すぐに業務的な返信があったが実際どんな顔をされたのかとAは想像するだけでも笑えてくる。
Aは後にエリス嬢から「最近リンタロウがやたらとツーショットを撮りたがるので迷惑している」と文句を言われることになる。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時