太宰さん ページ25
「へっくし!」
中也さんのくさめの声ではっと我に返った。
Aはほぼ反射的に右手を胸元へやった。指先がブラウスの胸元へ触れたところで気づいて止め、テイッシュの箱をとって中也さんに差し出した。
Aは高校時代、いつもセーラー服の内側のポケットにテイッシュをしまっていた。だからいつもチリ紙は胸元へ手をやると出てくるものだった。
「どうぞ」
「おお、ありがと」
「お風邪ですか」
ずーっと中也さんはそれで鼻をかんだ。
「別に」
莫迦は風邪をひかないのではない、風邪をひいたことにすら気づかないのだよという嘗ての太宰さんの言葉が蘇った。
「そういえば、中也さん、私のことを何か太宰さんに話されましたか」
「あいつに会ったのか」
中也さんは太宰の事が大嫌いだと宣言している。
「ええ。『私と夢を同じくする美女とは君のことか!』とかなんとか」
「あー、そういやあんとき、ジサツ志望のやつを探しとくとは言ったな」
中也さんはちょっと笑いながら言う。あの時というのは太宰さんが捕縛されて中也さんがちょっかいを出しに行ったときのことか。
「殺しそびれました」
Aはため息をひとつついた。冷たいため息だ。
「殺すなって命令なんだから仕方ねえだろ。癪だが、今はあいつが居ねえとこの街が焼け野原になる」
中也さんは片方だけひょいと眉を上げた。
「あら、それはいつものことでは?」
とAは笑った。Aは熱や火を操る異能の持ち主だからだ。
「手前はいいだろ。いい大人なんだから」
「そうですね」
いい大人という言葉にドキドキしてしまう。
「暗殺部隊が出来た折には必ず参加します」
「やめとけ」
そう言い放った中也さんは空になったコーヒーカップをもてあそび始めた。
「何故です」
「手前が倒せる相手じゃねえからだ」
「……」
「手前に殺されるようなクズなら俺がとっくに殺してる」
「俺は俺の部下があいつにやられるとこなんか見たくねえんだよ。けど」
俺を倒した部下なら話は別だ。
中也さんはそう言った。
一瞬、沈黙があった。
「無理ですよ、それは」
Aは笑った。夢でも無理そうだ。
ていうか中也さん無しの暗殺部隊なんて勝てる気がしない。中也さんが居るとそもそも暗殺ではなくなるかもしれないが。
Qが座敷牢から解き放たれた今、異能を無効化する力を持つ太宰さんはマフィアにとって必要なのだ。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時