夕焼け ページ22
「戻ったぞ」
雲が茜色に染まる頃。執務室へ帰ってきた中也さんは上機嫌だった。だいたいそういうのは部屋へ入ってくる前に靴音で分かる。
「ご苦労様です」
Aは中也さんの外套をハンガーにかける。
「今頃探偵社と組合は潰し合いかァ」
と中也さんはケラケラと乾いた声で笑った。
「そうですね……探偵社長は何とおっしゃっていました?」
今度はAは珈琲を用意しながらああだったとかこうだったとかいう話を聞くことになる。
Aの方から質問することが多いのは報告書を書くために必用な情報を聞き出しているためである。
怪力の少年がいただとか、道中は自動迎撃砲台だの監視カメラだのばっかりだったとか、中也さんが珈琲を半分くらい飲む間に必要なことは大体聞いてしまった。
ご機嫌ですねと云うと、久しぶりに帽子の良さがわかる奴に出会ったんだと珈琲カップの縁の向こうで笑った。
「あら、私はずっと前から素敵だと思っていましたよ」
Aは飲みやすい温度になってきた珈琲を1口飲んだ。Aが瞳を覗くと中也さんは逃げるように顔をそらした。
「……そういうのはもっと早く云え」
反応が分り易すぎるのもなかなか問題だ。
挑発に乗っても逆に相手を倒してしまう中也さんだから戦いの場においては関係ないのだが、ここは生憎此処は幹部執務室で相手は部下のAである。
その特性は今はなんの役にも立たない。中也さんは脚を組み直した。
「……初めてお会いしたときにも申し上げたと思いますけど」
「そうだっけ?」
中也さんもAも、マフィア歴は浅くない。
裏社会が積極的に異能力者を集めるため、一般人とは共生しづらいのかやはりその子供も裏社会で育つ傾向がある。中には表の社会へ出ようとする者も居るが、そういうのは失敗するケースが多い。
だが不可能とも言い難い。太宰さんのような人もいるのだから。
中也さんもAは組織を抜けるなんてことにこれっぽっちも興味がない。各々理由は違うけれど。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時