ゝ ページ21
演技だ、茶番だと分かっていても、やはりこれでドキッとしない女の子、いや人間はあるはずもない。敦くんもツッコむのを忘れてぽかんと口を開けている。
「おひとりでどうぞ」
Aは、ええ、もちろんと答えるような笑顔でそう言う。
「うわあん! Aちゃんが私に冷たい!」
「あら今更なにを。それに、他の方にも同じように言っているんでしょう?」
Aはため息をついた。
「私はいつでも本気だよ」
血のような色の瞳が、真っ直ぐにAを捉える。
「なんなら君が私を殺してくれても良いのだよ」
太宰さんはどうせ殺せないと思っているのだろう。愉しそうに口の端を上げた。
異能力が無効化されなければ、今すぐにでも火炙りに出来るのに。
そう思いながら、Aは少年の方へ視線を移す。
「貴方が噂の人虎だったとは知らなかったわ」
「懸賞金も欲しいけれど、貴方も欲しいわね」
と言って見上げると敦くんは本当に困ったように、困りますと言った。
「太宰さんがお助けになったのですね」
Aが太宰さんを見上げるとまあそういうことになるかなと目を細めて笑った。
「あの、Aちゃんは太宰さんの前の職場の人ってこと?」
「そうよ」
Aはまた太宰さんをちらっと見上げた。
「ってことは太宰さんは元はコンビニの店員……?」
当然太宰さんの前職は探偵社では秘密になっているんだろう。
「いや、違うよ」
と太宰さんは涼し気な顔で笑った。それを見ながら、太宰さんがマフィアに居たなんてきっと探偵社員は思いもしないだろうなとAは思った。
Aが喋って時間を稼いでいる間に、太宰さんへ電話がかかってきた。おそらく、探偵社の事務員を救うようにという沙汰だ。
Aは風のようにその場を去った。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時