敵 ページ20
Aは攻撃を仕掛けるのより、相手から受けた攻撃に対して有効に反撃するほうが得意だ。と思う。
「うーん、君、全然変わらないね」
「さっきから考えてたのは其れですか!?」
とAは思わずツッコんでしまった。
太宰さんはやっぱりちっちゃいねえと意地悪く笑いながらAの頭を撫でた。
「さり気なく異能が使えないようにするのやめてください」
「Aちゃん、さっきからツッコむところが違うよ」
太宰さんはヘラヘラと笑った。Aはその手を振り払いたい気持ちを抑えながら言う。
「これでも2センチ伸びたんです!」
「おお、それは大きくなったねえ」
何か攻撃を出せばそれは太宰さんの思うつぼだ。
挑発に乗っても逆に仕掛けた相手を打ち負かしてしまう中也さんほどAは強くないし、それにその中也さんも結局太宰さんには勝てない。
Aは背の高い太宰さんを見上げた。
「生きていらっしゃいますね、太宰さん」
Aは彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。生き生きしている。組織にいた時とは違う。
穏やかに細められた目は、どこか冷静にAを観察していた。忘れるな、今は敵同士だ。
「嗚呼そうなのだよ! 川に飛び込んだり毒キノコを食べたりしているのに一向に死ねないのだよ」
願えば叶うと母から聞いたことがあるが、彼の場合は願えば願うほど遠ざかるようだ。まあ、彼は以前ほどには死を望んでいないように見えるが。
「それは大変ですね」
「ってAちゃん!? そこはツッコむところだよ?」
敦くんがそう言って身を乗り出した。
「はっ! そうか、彼が言っていた私と夢を同じくする美女とは君のことか! Aちゃん、私と心中しよう!」
太宰さんはぽんと手をひとつ打って、包帯の巻かれた手でAの手をとった。
「不合格です。やり直してください」
Aはそこでその冷たい手を初めて払った。
「不合格って何!!?」
そう、敦くんがツッコミをしてくれないと、この場はボケだけになってしまうのだ。
「こほん」
太宰さんはひとつ咳払いをして、Aの前に片膝をついた。
「嗚呼、薔薇のように香り高く美しいお嬢さん……どうか私と心中して頂けないだろうか」
Aを見上げる双眸は一抹の残り火のように儚げで、見る人の心を締めつける。この世に失望し、Aとの永遠を願う人のそれだ。
まるで映画のワンシーンのよう。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時