ゝ ページ16
「シュークリームですか」
Aは嬉しそうにしつつも心の中で苦笑いをした。夕方梶井さんのところで檸檬ケーキを食べてきたばかりだからだ。彼がAを探していたのはどうやらそのためだったらしい。
「思ったけど上司を起こすどころか寝かせるし、それに手前はエリス嬢んとこで食ってるもんなァ」
中也さんはニヤリと笑った。そうやったらAが釣れると思っているのだろう。きっとそうやって事務仕事をやらせる気だ。だがそうはいかない。
「あっ、では中也さんはわざわざその為に待っていてくださったのですね?」
「……んなわけ」
と言ったぎり中也さんは言葉に詰まってしまう。逃げ道なかったのかよとAは心の中でツッコミを入れた。どうやらパッと思いつきでやったらしい。
「ありがとうございます。すぐ珈琲をいれますね」
寝たフリしてたとこまでは良かったんだけどなと中也さんは呟いた。
「それには騙されました」
2つの甘いシュークリームに2杯の苦い珈琲がローテーブルに並んだ。
「そうか?」
中也さんはテーブルの向かい側で少し嬉しそうな顔を見せた。事務仕事を終わらせておきましたなんて言うと飲みに連れて行かれるのでAは今日は黙っておくことにしようと決めた。
中也さんより1時間後に執務室を出ると、降りてきたエレベーターに樋口さんが乗っていた。金色の髪を頭の上で結い、パンツスーツを着こなす彼女はAと正反対だと言えよう。
「あら樋口さん」
「笹原さんも仕事終わりですか」
樋口さんはため息をついた。ガラス張りのエレベーターがヨコハマの街へ落ちていく。
「丁度良かった。一緒に帰りましょう」
Aは学生が友達に言うそれと同じような口調で言った。ちなみにAの方が彼女より二つ歳上だ。
「……構いませんが」
樋口さんは綺麗な眉を少し曲げた。一緒に帰ろうの意味は車通勤の彼女がAを家まで届けるということにあるからだ。
とは言ってもAと樋口さんは同じマンションの住人なのでわざわざ他へ送っていく必要はない。
本当は乗せたい人が別にいるんだけれど、Aがその人を乗せられないと知っていて誘うので笑われているようで不愉快なんだろう。
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さなえ@Love伊織(プロフ) - 百合姫さん» ありがとうございます。行間、ですね。参考になります!もう少し開けてみようと思いました。なにより読んでくださってありがとうございました! (2017年5月24日 0時) (レス) id: c77dc7fe4b (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - たいです。勿論、高評価させて頂きました。長文、三つ前のコメントの誤字、失礼致しました。最後になりますが、さなえ@Love伊織様。イベントに参加して頂き有難う御座いました。此れからも、他の作品の更新など頑張って下さい。応援しています。 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - ありませんが、横書きの場合文が詰まっていると辿るのが少し難しいと感じたので。と、云っても此の書き方で行く、とさなえ@Love伊織様が決めていらっしゃるのでしたら、其れでも全く問題無いと思います。小説の書き方に沿った、素晴らしい物でした。私も見習い (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 文の間に改行を設けてはいかがでしょうか。一話を一つに纏める、ということでしたら文字数の影響もあるとは思いますが、見たところ其のような形式で書かれていないようなので、余裕を持って間を空けても良いと思います。勿論、書籍の様な縦書きの物なら空白は必要 (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
百合姫(プロフ) - 素晴らしいと感じました。占いツクールではあまり見ない、硬い?文章ではないありましたが其れも魅力の一つだと思います。話の流れ、文の構成共に普段から小説を読み慣れている方には、よく合う物だと感じました。僭越ながら、アドバイスをさせて頂くと台詞と (2017年5月23日 1時) (レス) id: f05eea04c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さなえ@Love伊織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeEs/
作成日時:2016年12月21日 8時