*降谷(安室)side ページ6
降谷(安室)side
『まだ足りないって言うならこのアイスティーを頭からかけるけど』
彼女は本気だ。
僕達が警察学校に通っていた頃、喧嘩を収めようとバケツで水をかけられたことがある。
底冷えたような瞳をして僕に投げかける言葉はその時と瓜二つ。
「いいえ。すみませんでした…」
ここは素直に引いておかないと後々のことを考えるととても厄介だ。
あの時、僕は彼女を無視して相手に殴りかかろうとした。
ヒロや萩原、伊達が介入して来た為、殴ることは叶わなかったが彼女に僕は1週間も口を聞いてもらえなかった。
喧嘩相手の松田も同じ扱いを受けていたが、このままでは埒が明かないと結託し、彼女に謝罪をしに行ってやっと許してもらえたのだ。
そんな彼女が今、あの時と同じ表情をしている。
これがどういう意味かもうお分かりだろうか。
『早く冷やすもの取ってきて』
「あ、あぁ」
このいつもに増して素っ気ない態度。
間違いない。彼女は怒っている。
これ以上、彼女の気を荒らげないようにバックヤードにそそくさと引っ込むと、棚の引戸を引く。
どうしようかと悩みながらも袋に氷を詰めて手に引っ下げると彼女のもとへ急ぎ足で戻った。
遠目でコナンくんと何か話してるように見えたが、残念ながら僕には聞こえない。
彼女は僕から受け取ったタオルで袋ごと氷を包むと、割れ物を扱うかのようにコナンくんの頭に触れる。
『ごめんね……安室さん』
「え…」
一瞬、コナンくんに向けられたと思った謝罪の言葉に戸惑う。
『私もついカッとなっちゃってごめんなさい』
「怒って…ないんですか?」
『あの時ほどは怒らないよ。私も貴方も歳を取ったし、いつまでもこのままってわけにはいかないし、それに…』
珍しく彼女が言い淀むと横一文字にギュッと口を引き結ぶ。
きっと思い出したのだろう。
今は亡き友人達を。
視線はコナンくんの頭上にあるが、伏せられた睫毛が震えているのが分かる。
大きな瞳から流れようとする涙に必死に耐えているのだ。
こうなったら僕が彼女にしてやれることは
『アイスクリームでも食べますか?』
「うん…」
美味しいもので気を紛らわすぐらい。
安室透の姿でしてやれることはこれが限界だ。
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明里香(プロフ) - 空回りの話、誤字がありました。「お箱だろ」ではなく、「十八番だろ」です。 (2021年2月22日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 夢主が降谷君の事を勘違いするシーン、面白かったです^_^降谷君、策士だなぁと感じました!続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2019年12月9日 15時) (レス) id: fb97b4034b (このIDを非表示/違反報告)
星香(プロフ) - 坂竹会長さん» ありがとうございます(o^^o)はい!コナンの夢小説に限らずですがたくさん素敵な作品があると思います。私の作品もその1つになれたらなぁー…と笑更新地道にやっていきます!吐血大丈夫ですか?! (2019年7月25日 13時) (レス) id: 3c957dd699 (このIDを非表示/違反報告)
坂竹会長 - 面白いです!久々にコナンの夢小説見に来たのですが、やっぱ燃えますね♪((更新頑張ってください!! 失礼しましゴホッ_ー¶#_スミマセン、トケツシマシタ (2019年7月24日 6時) (レス) id: d6f7fc00e7 (このIDを非表示/違反報告)
星香(プロフ) - あかりさん» あかりさんありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月19日 15時) (レス) id: 3c957dd699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星香 | 作成日時:2019年7月8日 20時