緑の楽園1-6 ページ33
次に見たのは軍靴。縛られたまま地面に転がされていた。起き上がろうと身を攀じると全身に痛みが走り、兵が持っている棒で俺が何度か殴られたのが分かった。
「御機嫌よう、枢機卿殿」
周りと少し違う服装。王都とは関わりがないからどのくらいの地位か分からないが上のやつだろう。
表情を変えない俺に一瞬眉間に皺を寄せるとすぐまたあの嫌な笑みを浮かべて腕を広げる。
「教会の前で処されるのも乙なものでしょう?」
いま、なんて言った。嘘だ、そんな!
痛い体を無理やり動かして振り返る。そこには教会…いや、教会"だった"モノがあった。
その周りも、家も人もいない。
俺が築き上げてきたものが…全部消えた。
世界がスローモーションのように感じる。俺の首をはねようと振り上げたこの男は宛ら死神か…。もう苦しまなくていい、嫉妬なんてしなくていい。なら俺の楽園はその先にあるのか…?
そうだ俺は自由になるんだ。
自由に…。
「ぐ、ぅ!?」
男の胸へ飛び込むようにタックルをする。足が縛られていないのが幸いした…。
鎧をつけていようと倒れてしまえばこっちのもの。男の顔を踏みつけて無理やり村の外へ走る。
自由になるんだ。生きて、生きなきゃ。
「死にたくない…!」
分かってる。世界はそんな都合よく作られてなんかいない。
破裂音と、俺の足に突き刺す痛み。それで理解するのは充分だった。
撃たれても、何をしても這って、進め。ここから出ろ。頭の中でずっと言い続けて進む。
背後から笑いながら死神の足音がゆっくりと近づく。
ふと、影がかかる。俺の前に誰かがいた。
見知らぬ真っ黒な軍服。雑に縛られた髪の毛。それでも
『はじめまして、枢機卿殿』
今の俺には天使のように見えた
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きむち鍋(プロフ) - 紫さん» コメントありがとうございます。セリフ調になっているのがとても可愛らしいですね! (2020年12月30日 18時) (レス) id: 4e029fbece (このIDを非表示/違反報告)
紫 - os 「続きが気になるめう〜」gL「頑張ってくれ!」紫『面白かったです♪、、、せーの』「「『これからも宜しくお願いします!』」」 (2020年5月9日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
きむち鍋(プロフ) - ノリシロさん» コメントありがとうございます! こういったジャンルは初めてですので至らぬ点もありますが、のんびりと更新させていきますので、ゆったり楽しんでいただけたら幸いです! (2019年2月25日 11時) (レス) id: 82753cc095 (このIDを非表示/違反報告)
ノリシロ(プロフ) - 設定や一つひとつの表現に人物たちの感情が滲んでいる感じがしてすごく好きです!!
更新楽しみにしてます、頑張って下さい! (2019年2月24日 14時) (携帯から) (レス) id: 2e9ea22d03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きむち鍋 | 作成日時:2018年8月28日 20時