明日、君が目覚めるなら ２ 【爆豪勝己】

５９日目. ページ9

_Aside_



勝己には足がつったって言ったけど、確実に誰かに引っ張られた
水中なのに凄い力だった


…誰だろう…？


水の中は凄く静かで暖かくて気持ちよくてどこまでも落ちていける気がした

気を失う前に見えたキラキラ光るものはなんだったのかな




「…はぁ」



時間が無いのに…



やるせないなぁ…



「…ぇ」




ふと、どこからか漂ってきた甘ったるい香水の匂いに顔を上げる


この匂い、私は知ってる



プールサイドの人達を見渡しても"あの女の人"はいない



…気の…所為…？



「…勝己っ！」



嫌な予感がして勝己が行った方向へ走った
待ってろと言われたけど、今は不安の方が強くて怖い


人にぶつかりながら勝己を探す



「おい！」



夢中で走っていて気づかなかった
勝己が私の腕を掴んで引き寄せてくれて大好きな匂いに包まれる


「待っとけっつったろ」

「ごめ…でも…っ」

「…帰んぞ」


…勝己、飲み物買いに行ったんだよね…？


なんで、何も持ってないの？



でも勝己から香水の匂いはしない…
聞きたくても怖くて聞けないままあとをついていく

手首を掴む力が強くて緊張が伝わってきた


「まって…勝己」

「なにもされてねぇよな？」

「な、なにが…？」


足を止め、私を見ないままそう聞いてくる
やっぱりあの匂いはあの人のものなんだね


「なにかあったの？」

「なんでもね、いくぞ」




私達は急ぎ足でプールを後にした

勝己はずっと焦って、それがヒシヒシと伝わってくる
帰りの電車も歩いてる時もずっと暗いオーラを放っていて耐えられずに握る手に力を込めた


あの人はちゃんと約束を守ってくれるのかな



「勝己、帰ったらいっぱいぎゅってして？」

「言われんでもするわ」



少しでも重い空気が和らぐようにと甘えてみる

今だけいっぱい甘えていいよね？



久しぶりのデートは微妙な感じで終わってしまった

だけどまだ時間はある



だからもう少しだけ、このままで……

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