時計はチクタク ページ47
乱歩さんは、「何も判らない」と云ったっきり何も喋ろうとはしなかった。広場の端にある階段の段差に腰かけ、頬杖を突いたまま虚空を見つめている。
「────」
私はその隣に座っていた。
一度乱歩さん、と呼びかけてみたのだがまるっきり返答がないし、此方を一瞥されただけで終わっていた。あの視線にもう一度耐えられるかと云われたら、正直そんな自信はほとんどない。
だって、何と声を掛ければ良いのだ。
たぶん此処にいたのが社長とか太宰さんだったなら、もっと何か彼に対して云えたことがあっただろう。社長は乱歩さんとずっと一緒にいたから、彼が今どういう言葉を求めているのかなんて容易にわかったはずだ。太宰さんも年数こそ違えど、それぐらいあの人の頭ならわかるはず。
私はただの、同僚だ。
なんて云えば良いのかもわからないし、むしろ声を掛けない方が良いのかもわからないし、大体さっき死体を見たばっかりでまだ喉の奥に異物が残ってるし、しっちゃかめっちゃかでどうにもできないし。
犯人が現実改変系の異能力者であることは、私も見当がついている。
例えば太宰さんやドスさんが犯罪を犯してそれを隠したとして、それで乱歩さんを欺けるかと云ったら──たぶん、無理だ。前回のアレは彼が直接犯罪を犯したワケじゃないし、紙面だけのものだったという例外中の例外だろう。
というかそもそも、彼が落ち込んでいるのかすらわからないのだ。天衣無縫を絵にかいたような性格の人が落ち込む処を想像できるかと云われても、私には欠片も想像できない。
だけど彼が真相を見抜けなかったことで落ち込まないのかと思うと、それは違うだろう。さっきと真逆のことを云うようだけど、多分そんなのは彼の性格的には無理だ。だって、自分が最強だと本当に信じている。それは彼だけじゃなくて、私だって彼が最強だって信じている。
悶々としながら時計を見ると、既に長針は幾分か回ってしまっていた。彼の心情を
私は乱歩さんの肩に手を伸ばし、不意に、その手を取られた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 709人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白夜の世界(プロフ) - 織田作さんです。(即答) (2020年9月9日 20時) (
レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
もーりーふぁんたじー - 白夜の世界さん» またアニメ見たいです……白夜の世界さんの推しは誰ですか？私は……全員ですね！ (2020年9月9日 18時) (レス) id: 0e56321508 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - もーりーふぁんたじーさん» 一気読みすげえ！！最初と最後の文章力の差が激し過ぎますが、えっ読んでくれてありがとう御座います……最近あんまり人気がないようで悲しいです文スト……アニメ再放送でも何でもいいからやってくれって願ってます……。 (2020年9月9日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
もーりーふぁんたじー - 一気読みしちゃいました！応援してます！ (2020年9月9日 17時) (レス) id: 0e56321508 (このIDを非表示/違反報告)
白夜の世界(プロフ) - 霧雨さん» コメントありがとう御座います〜〜！！三日毎更新と少し遅いものではありますが頑張っていきたいです……！だけどこの先どうすればいいのか絶賛悩み中です(笑)。 (2020年8月30日 17時) (レス) id: ad65672360 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白夜の世界
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/nisui03101/
作成日時：2020年5月1日 17時
