福沢さんの猫好きが無邪気すぎるんだが？ と思った今日この頃。

横浜市警第二十七警備併設、留置所 ページ33

──横浜市警のとある警備所に併設されている留置所。

乱歩さんはその中に着ぐるみを着たまま入って行き、係員さんを仰天させていた。私はペコペコ頭を下げて、彼の帰りを待つ。此処で待ってろと云われたからだ。命令形で話すことしかできないのかあの人は。




『────』




まあ頭が弱い私でも、彼がどうして此処に来たのかは分かる。

国木田さんに会う為だ。──ドスさんにハメられて、少女を殺害した容疑者として留置されている国木田さんの。


一番最初に私達が捕らえようとした、ウイルス異能者になりすまされた(この表現が合っているのかどうかすら判らない)男と共に住んでいた少女。

その子は自分で手榴弾の安全ピンを抜き、自爆した。これが国木田さんの主張なのだが、状況証拠が揃い過ぎている為に警察からは完全な犯人(クロ)として扱われている。勿論探偵社の誰一人として、彼が犯人だなんて思っている奴はいない。



ドスさんにとっては、恐らくささやかな嫌がらせ程度だ──そのささやかの度合いを、どうか全国民が揃ってドスさんに教えてやって欲しい。全国民っつーか全人類っつーか。

ハァ〜〜警察は無能か？ マジで無能か？ あの名探偵の江戸川乱歩が犯罪者となった探偵社員を告発しない訳ないだろ？？ 乱歩さんの頭脳を信じてるのか信じてないのかどっちなんだよもう〜〜……、でも信じてる人もいたんよなぁ天人五衰編。


…………首謀者って、慥かあの人だよな？ あの──、一番意外そうな、






────────────あの、人。






「おい」

『っうおお！？』



色気もへったくれもない声をあげた私の前で、クマの着ぐるみ──じゃなかった、乱歩さんが立っていた。こういっては何だが(こういうも何もないが)、背景とクマが死ぬほど合っていない……、そりゃ留置所と売り子ように着ぐるみだったら合ってないのが当然なんだけど。

乱歩さんは不機嫌そうに眉根を寄せて、「行くぞ」と告げた。だからアンタは命令形しか喋れねぇのかよ……。

若干呆れの気持ちも入りつつ、『リョーカイです』と云って席を立つ。




「──お前は僕が守ってやる」

『……え、あの、今なんか云いました？』

「云ってない」




スタスタと先を歩いて行く乱歩さん。


……あの、すみませんガッツリ聞こえてたんでちょっと心臓が爆発して死にそうなんですけど死んで来て良いですか。

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