290話 ページ44
ちょうど汽笛の音が響いて、シンデレラ特急が滑りこんできた。
とてもゆっくり動いていて、そのベランダから飛び乗ろうと思えばできるくらいだった。
「この館は1階のどの部屋からでも、シンデレラ特急に乗れるようになっているの。館内を通る時には[動く歩道]より遅い速度に調整されているから、誰でも乗ることができるわ。だから駅はいらないのよ」
それはもしもの時、この館内にシンデレラ特急が通っていたらそれに乗って逃げられるということか。
…考えすぎか。
「あら、ちっとも食べ物が出てこないわね。ちょっと台所を見てくるわ。ついでに着かえてくるわね」
私達は誰もが大人しく頷いて、出ていくミシアを見送った。
その間にスマホで地図を写真に撮っておく。
このイラストでは線路が大きく曲がった所はない。
実物と違う可能性はあるが、もしこの通りなら成人男性が振り落とされるなんてあるのだろうか…。
インターネットでこの館の近くの病院もリストアップする。
「桜田は何がいい?」
『え?ごめんなさい、何が?』
「昼飯だよ。話聞いてなかったのか」
『考えごとしてたわ。私は体調があまりよくないから、お昼は遠慮するわ』
「え?大丈夫?」
『大丈夫よ。少し車に酔っただけ』
そう話していると、ドアがコンコンとノックされた。
若武君が叫ぶ。
「来たぞっ!」
皆はサッと自分の椅子に座り直し姿勢を正した。
まるでずっといい子で静かに座っていたみたいに。
こういうところはまだ子どもで微笑ましいわね。
「おや、君たちは?」
開いたドアから入ってきたのは1人の男性だった。
50代の半ばくらいで、丸めた1枚の用紙を握っていた。
甥のカナールか?
「僕達お昼に呼ばれたんです」
若武君が立ち上がってそう言うと、男の人は納得したように微笑んだ。
「ミシアはどこだい。さっき声がしたようだったが」
……!
ミシアの名前を口にした途端、目の色が変わった。
あのオートクチュールの店の時の男性と同じ目だ。
それでも、何故ここにいる…?
「今台所に見にいきました。すぐ来ると思いますけど」
若武君の説明に男性は頷いた。
「じゃ、台所に行ってみるよ」
そこにミシアが戻ってきたのだった。
服を着かえていたけれど、会ったときから香っているのと同じ香水をつけていた。
この香りはバニラだろうか。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時