255話黒木side ページ9
「いや、僕たちは無関係です。むしろ被害者だから」
吉野の表情が和らいだので言葉を重ねる。
「僕らの友人が騙されて、酷い目に遭いました。僕らは本当のことをはっきりさせたいと思って、ここに来たんです」
すると吉野は深く頷いた。
「そうだよな。ダチがやられると、すっげぇ頭くるもんな。俺なんかさ」
そこまで言いかけて慌てて身を引き、椅子の背にもたれかかった。
「アブねぇ。うっかり喋るところだったぜ」
そう言いながら俺と上杉を見回した。
「あのばあさんから留守を預かったってなんだよ。ばあさんとツルんでんじゃないのか」
上杉とまた視線を交わし合う。
それを見た吉野は、バカにしたような薄ら笑いを浮かべた。
「俺を騙せると思ったら大間違いだぜお前らみたいなガキに、舐められてたまるかよ」
腕を組んでふんぞり返り、俺達を睨む。
ここはやはり今持ってる情報で何とか脅.すしかない。
上杉が吉野に向き直り、口を開いた。
「あんたがここに火炎ビンを投げこんだってことはわかってるよ。証拠もある」
吉野はぎょっとしたような顔つきになった。
「佐藤小悔さんからバッグを引ったくったってこともね」
もちろんただのハッタリだ。
俺達は犯人が吉野だという確実な証拠は持ってない。
しかし自信たっぷりに言えば、それだけで相手は騙される。
吉野もすっかりうろたえ、落ちつかない視線でキョロキョ口と部屋の中を見回し始めた。
ここでさらに追いつめていく。
「確か引ったくり事件は警察が捜査してるんじゃなかったっけ?俺、電話で通報してもいいんだけどな」
吉野はイライラと貧乏ゆすりを始めた。
「でもあんたが本当のことを話してくれたら考え直すよ。どうする?」
吉野はテーブルを挟んで向かい合っている俺にかみつかんばかりだった。
「悪いのは俺じゃねえよ。あのババアなんだ」
まるで吼えるように叫んでくる。
「だって相手はご老人だぜ。警察だってあんたの方を疑うと思うけど」
吉野は首を横に振り大きな息をついた。
「それがそうじゃないんだ」
上杉がうっすらと笑う。
「信じられないな。やっぱり通報するよ」
そう言って立ち上がりかけると、咄嗟に吉野も立ち上がる。
「わかった。言うよ。だから警察は止めてくれ。ようやく見つけたバイトクビになっちまう」
78人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時