296話 ページ50
上杉が皮肉な笑みをうかべた。
「事故にしても、犯.罪にしても、秀明にとってはマイナスだ。評判が落ちると、塾生が減るからな」
若武くんがため息をつく。
「少し減ってほしいよ。クラスの人数、多すぎ。端の席だと、声がよく聞こえなくって、とくに国語の授業なんか、チンプンカンプンになるぜ。それでオレ、今回、クラス落ちしたし」
みんなが、いっせいに若武くんを見た。
「ほんとかっ?!」
若武くんはしゃべりすぎたといったように、あわてて口をつぐんだけれど、もう遅かった。
みんなは、ニヤッと笑って若武くんを取りかこんだ。
「そいつは、気の毒にな」
「みんなで若武先生をなぐさめよう」
「落ちたのかぁ…」
さもおもしろそうにからかっているので、気休めになるかは分からないが、フォローをいれる。
『若武くんは多少波があるから、またすぐに挽回できるわよ』
「そうだよな!次回で、落ちた分の3倍上がってやるから、見てろ」
若武くんが、みんなのかこみをふりほどいた。
「さ、行くぞ。小塚は、ここで待っててくれ」
『それはダメよ。一緒に来てちょうだい』
みんなが、何でといったような顔でこちらを見る。
ミシアを危ないと言うわけにはいかないし…。
『今この館には、確実なだけで2人の敵がいるのよ。それも、2人とも成人男性。私たちは早い話、邪魔な存在。小塚くん一人にして、安全な保証はどこにも無いわ』
若武くんは、わかったと言うようにうなずいた。
「小塚も連れていくとして、ミシアはどうする?」
『あいつらの狙いは、あくまで遺産。ミシアにすぐ、命の危険は無いと言えるわね』
「まあ、早めに帰ってくるに越したことはない。早く行くぞ」
上杉に急かされて、私たちはミシアの館を出た。
寄宿学校に戻り、引率責任者の先生に会って、それぞれの名前と事情を話した。
もちろんKZのことは言わず、街で出会った有名画家の養女ミシアに自宅に招待されたので、このチャンスをとらえて人生経験を増やしたいというようなことを言った。
先生がこころよく許してくれそうな言葉を考え、スラスラッと口にしたのは、もちろん黒木くん。
「許可してもいいが、1つ約束してくれ」
先生が言ったのは、朝晩、ちゃんと寄宿学校に電話を入れて、健康状態もふくめて異常がないかどうかを報告せよということだった。
「わかりました。そうします」
若武くんが約束し、先生がうなずき、それで交渉は終わった。
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きょっちー(プロフ) - ゆめさん» コメントありがとうございます!次はシンデレラです。私もKZのみんなと旅行したいものです。これからもお願いします! (2019年12月6日 7時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ(プロフ) - 続きが気になります!更新頑張ってください! (2019年12月5日 19時) (レス) id: 21a29bd71d (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - RiRさん» 返信遅くなってすみません!繰り返し読んでいただいているようで、本当にありがとうございます!駄作者のことまで気にかけていただいて…。これからも応援してもらえたら嬉しいです。 (2019年12月3日 16時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
RiR - とっても素敵なお話をありがとうございますm(_ _)m気づいたら5周目ですww 応援しております。無理のない範囲で私に続きをお恵みください! (2019年12月1日 16時) (レス) id: 6882897af8 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - 三毛猫さん» ありがとうございます!ただ今、新企画も企画中ですので、そちらも楽しみにしていただければ嬉しいです。これからもよろしくお願いします! (2019年12月1日 10時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年11月30日 15時