5話 ページ7
授業が終わって、私は特別クラスに向かった。
教室に入ると上杉君と黒木君は話しこんでいて、小塚君は星座早見盤を見ている。
私が入ってきたことに気付いた二人は、話を止めてこちらを見てきたので、耳を塞ぐジェスチャーをして、続けるよう促す。
机の上には教材の山が二つ置かれていて、付箋で[立花][桜田]と区別されていた。
私の方には書類も置かれている。
教材の山を確認していると、若武君と立花さんが勢いよく入ってきた。
「どーした、若武」
若武君は一人一人に視線を配って、徐ろにに口を開いた。
「大事件だ」
…上杉君の言っていた気取り屋というのは間違っていなかったらしい。
黒木君がふっと笑って口を開いた。
「秀明の前でネズミでも死んでたのか」
「いいや」
そう言ったのは上杉君。
「誰かが、階段から落ちて、鼻の頭でも擦り剥いたのさ」
二人は顔を見合わせ、それからクッと笑いだした。
若武君はもちろん、火が点いたように怒鳴った。
「俺のチャリが盗まれたんだ!」
二人は一瞬で笑いを消し、真剣な表情になった。
途端に小塚君が、身を乗り出すようにして言った。
「若武、乗ってきたのか。勇気あるよなあ。どうやって親を説得したのか教えてくれよ。僕も、チャリ通にしたい」
若武君は、完全に頭に血が登ってしまったらしく、ツカツカと小塚君の前まで歩み寄る。
私は教室の後ろの方に、気付かれないように移動する。
小塚君の手から星座早見盤を取り上げ、フリスビーのようにこちらに放り投げてきたので、少し跳んでそれをキャッチする。
黒木君がヒュウッと尻上がりの口笛を吹いた。
「ナイスキャッチアンド先読み」
上杉君も小さく手を打ってくれた。
私は小塚君にそれを手渡した。
「ありがとう」
若武君はそれらを無視して、上杉君と黒木君の机の上に、ドンと両手をついた。
「リサーチ開始だ。犯人を見つけるんだ。行こう!」
上杉君と黒木君は、仕方がないといったように溜息をつきながら、立ち上がった。
「乗ってくるなよ、新品のチャリなんかに」
「そうだよ。盗られるの当たり前じゃないか。鍵や盗難防止用チェーンなんか簡単に開くんだしさ」
ブツブツ言いながら出ていく二人の後に、若武君が続き、立花さんが続いた。
最後に小塚君がついていき、その後から私も移動する。
「くっそ、もう少し早く授業が終わってたらな」
若武君が階段をおりながら、悔しそうに言う。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時