5話 ページ49
有田は一度カウンターに戻ると、サインペンと色紙を持って戻ってきた。
「ここに、あなたのサインが欲しいんだけど」
それを聞いた若武は、叫ぶように有田に聞いた。
「何で、桜田のサインが欲しいんですか?」
有田はまだ嬉しそうに話した。
「桜田総一郎先生の[薊の少女]シリーズって知ってる?先生が、自分の娘が主人公のモデルだって言ってるの。それでその娘がこの塾に通ってるって、他の先生から聞いてたのよ」
俺達は、驚いて桜田を見た。
俺も、薊の少女シリーズは、読んだことがあるし好きの分類に入る。
長い黒髪、クオーターのため灰色の瞳、常識離れの観察力や推理力、洞察力に記憶力。
自分で作った発明品を使って、凶悪な犯人と戦うことが多い。
…確かに、桜田に当てはまることばかりだ。
俺と同じで薊の少女のファンの小塚も嬉しそうな顔で、桜田を見ている。
居心地が悪いのか、桜田が言った。
『ねえ、会議するのよね。早く特別クラスに戻りましょうよ』
若武は思い出したように図書室を出て、俺達もその後に続いた。
※※※
ASIDE
特別クラスに着くとそれぞれが自分の席に座り、会議が始まった。
「誰が」
上杉君が眼鏡の向こうで、静かに目を光らせる。
「いつ、何のためにやったかだな。黒木、どう思う?」
黒木君はわずかに首を横に振った。
「これだけの材料じゃ、まだなんとも言えない。若武、その雑誌を小塚に渡しとけよ。そこからできるだけ多くの手がかりを引っぱり出すんだ」
若武君は足を止め、丸めて持っていたその本を小塚君に渡した。
「頼んだぞ」
小塚君は得意そうに笑って、大きく頷く。
自信と誇りを感じさせる微笑みだった
自然界のことや生物、化学、社会全体についての小塚くんの知識は頼もしい限りだ。
そのため、1つのものを観察し調べあげる仕事は、小塚くんに回される。
「あと、切り取られたページにどんな記事が載っていたのかも知っておきたいな」
若武君の声に、黒木君が手を上げた。
「それ、俺がやる。同じ雑誌を手に入れて、コピーしてくればいいだろ」
黒木君は、対人関係のエキスパート。
広い人脈から、どんなものも引っぱり出してくる。
「とりあえず、こんなところかな」
若武君がそう言った時、上杉君の腕でピッピッと時計が鳴った。
スイッチを押して音を止めながら上杉君はニヤッと笑う。
「楽しいお勉強の時間だ。教室に行こうぜ」
「じゃ続きは、明日やろう」
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時