4話 途中から和典SIDE ページ48
小塚君はその疑問になんとか答えようと、雑誌をめくったり閉じたりしていたけれど、やがてそれを奥のほうまでグイッと開いて言った。
「切り取られたんだ。見てよ」
私達は、一斉に小塚くんの手元を覗き込んだ。
奥の方に切れたページの端が残っている。
ほとんど見えないくらいわずかに。
「でも、そんなことできないはずよ」
有田先生が言った。
「この図書室はご覧の通り、こんなに狭いでしょう。閲覧室もないし。私がいつもこのカウンターの中にいるんだから、見つからずにページを切るなんてできっこないわ。帰るときには、カギをかけていくし」
私は雑誌の切り取られたページの前後のページを触ってみた。
特に変わったところはない。
ということは、下にスケールを敷いて切ったんだろう。
それにこの黒い汚れは・・・。
「有田先生が、ちょっと席を外した隙に素早くやったってことは?」
黒木君の質問に、有田先生はキッパリと首を横に振った。
「席を外すことなんてありません」
上杉君が、すかさず口を挟んだ。
「本当に?忘れてるってことは!?」
「ないわよ」
有田先生がムッとした口調で答えたので、私はゆっくりと口を開いた。
『この切り口、とても綺麗よ。顕微鏡か何かで見なければはっきりとは言えないけれど、多分カッターとスケールを使ってるわ。ということは、そんなに急いでやった仕事じゃないってことね。急いでるのなら破りとってるわ』
「となると犯人はこの本を借りていって、家で切ったってことになるよな」
そう言いながら若武君が、有田先生を見た。
「この本を最後に借りた生徒の名前、わかりますか?」
有田先生は参ったというように溜息をついた。
「それが…この本は、ここに入ってから、まだ一度も貸し出してないの」
それはそうだろう。
貸し出していたならその人が犯人なのだろうから、私たちにわざわざ頼むことはない。
「わかりました」
はっきりと言った若武君の目には、リンとした光が煌めき始めていた。
「この本は重要証拠物件としてお借りします。では、これから捜査会議に入りますので失礼します」
※※※
和典SIDE
俺達が図書室を出ようとしたとき、
「あっ、ちょっと待って」
有田が引き止めてきた。
そして桜田の前に立った。
「あなたが、桜田Aさん?」
『はい』
有田がパッと嬉しそうに笑った。
「じゃあ、お父さんは桜田総一郎さんよね?」
桜田は溜息混じりに答えた。
『そうです』
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時