39話 ページ41
自信たっぷりな上杉君に、黒木君と私は頷いた。
「上杉教授のおっしゃるとおりだ。これしか、方法はないね」
立花さんも小塚君も頷いた。
その時、若武君がおずおずと提案した。
「せめて、俺達がやったってことだけでも警察に知らせることはできないかな。盗聴については言わずにさ‼️だって、せっかくここまで犯人を追いつめたんだぜ。全部俺達がやったんだぜ。それなのに…」
黒木君と私が前後して言った。
「できないね。諦めろ」
『データは今夜CDにダビングして、明日の朝にポストに入れるわ』
若武君は今にも泣きだしそうになった。
「それじゃ、骨折り損のくたびれもうけってことかよ。誰にもわかってもらえず、チャリも戻ってこず、表彰もされないなんて…そんなのありかよぉ」
情けなさそうに言った若武君に、黒木君がニヤッと笑って言った。
「世の中にはそういうこともあるさ」
「そう」
上杉君が突っ込んだ。
「たまには、ひっそりと善行を施すのもいいことだ。お前はいつも自分のしたこと以上に宣伝しすぎるからな」
小塚君が楽しそうに賛成した。
「若武が誰にも知られずにいいことをするなんて凄いよ。今世紀最大の事件だ」
立花さんも言った。
「自転車のことは、不幸と思って諦めた方がいいと思う」
若武君は我慢できないといったように立ち上がった。
「ああ、どうせお前達のチャリじゃないからな。好きなこと言ってろよ、バカやろう」
そのふてくされた様子に、皆がドッと笑いだした。
若武君はますますムクれあがって私達を見回し、皆は笑い転げるばかりだった。
※※※
その夜、私はあの子が動くと読んで、ある場所で待機していた。
その間、上杉君の言葉が頭から離れなかった。
{いくらその結果、犯罪が未然に防げたとしても罪は罪なんだ}
その言葉は、私の心の深いところを抉ったように感じた。
罪は罪。
私は、前世の罪を背負わなくてはいけないことを忘れてはいけない。
そんなことをモヤモヤと考えているうちに、あの子がある建物に入っていった。
私はその建物の入り口に近いところに移動する。
ふと道を見ると、立花さんも来ていた。
そしてある家の玄関が開き、若い男が現れた。
手の中にしっかりと金属バットを握っている。
足音を忍ばせ、あの子が入った建物に歩いてくる。
その時、建物から物音が聞こえた。
男は確信をもったように建物に近づいていく。
その4〜5メートル後ろを立花さんが歩いている。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時