3話 ページ5
「じゃ立花、桜田、クラスに戻っていいぞ。授業が終わったら、もう一度ここに来てくれ。テキストを机の上に置いておくから。桜田は一緒に書類も置いておくからな」
私たちがはいと答えると、先生は頷いてドアから出ていった。
立花さんもその後に続こうとしている。
私は人間関係の面倒事はごめんだ。
4人に向かって笑顔を作る。
『桜田Aです。これからよろしくお願いします』
若武君は満足したように頷いて、
「立花」
と立花さんを呼び止めた。
「挨拶は?」
言われた立花さんが唐突な一言に黙っていると、若武君が目に苛立たしそうな光を浮かべた。
「お前、新入りだろう。前からいる俺達に、ちゃんと挨拶しろよ」
立花さんは暫く考えて、私達に向き直った。
「はじめまして、立花彩です。これからよろしくお願いします。数の上杉君、シャリの小塚君、桜田さん、女ったらしの黒木君、それに人間とポストの違いも分からない、いばり屋の若武君」
4人の反応は三つに分かれた。
上杉君と小塚君は吹き出し、黒木君は目を光らせ、若武君は立花さんを睨んだ。
立花さんも睨み返している。
「おい、立花」
そう言いながら、若武君が立花さんの方に踏み出そうとするのを、黒木君が慌てて肩を掴んで止める。
「止めなよ、若武。お前の負けだ」
黒木君は少し眩しそうに目を細め、立花さんを見た。
「なかなか洒落た挨拶だったよ、立花彩。さすが国語のエキスパートだ。君の能力を認めるよ。仲良くしようぜ。ただし」
言いながら、黒木君は若武君を振り返り、からかうように笑った。
「俺なら若武のことは、いばり屋っていうより、目立ちたがり屋って言うけどな。こいつったらいつもハデに決めたがって、それで失敗するんだぜ」
……確かにそんな雰囲気がある。
上杉君も言い出した。
「俺なら、気取り屋って言うね。若武は、どんな小さなことでも、とにかくカッコつけてやりたがるんだ」
小塚君がボソッとつけ加えた。
「僕はヒトラーばりのはったり屋だと思うな。どんな話しでも若武がすると、よさそうに聞こえるもん。人を唆す名人だよ」
立花さんは笑いだし、若武君は今にもはち切れんばかりに剥れ上がった。
そして自分の肩に乗っている黒木君の手を払い除けると、忌々しそうに皆を睨み回し、最後に立花さんを射竦めた。
「ああ、俺はいばり屋で目立ちたがり屋で、気取り屋で、唆し屋だよ。悪かったな」
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時