警察官でした。

37話 ページ39

私は録音データを再生した。

やがて二人の男性の声が流れだした。

【よう、どうしてもやるのかよ】

【もち。今度は、駅の向こう側のコンビニにしよう】

【2件続けてコンビニだと、ヤバいんじゃないの？】

【大丈夫。あの手の店はバイトの店員が多いんだ。バイトの奴らは店の金を守ることより、自分がケガしないことのほうが大事だから、ちょっと脅せば大人しく金を渡すよ】

小塚君が目を丸くしてパソコンを見つめ、上杉君がレンズをキラリと光らせる。

【気をつけなくちゃなんないのは、逃げ道だ。おい、しっかり調査しといてくれよ。前のノリは、困るぜ。あの自転車にはまいったからな】

【ああ、わかってる。だけど、下見したときには、あんなのなかったぜ。あんな狭い道にチャリを止めるヤロウの気がしれねーよ。なに考えてやがんだろ】

若武君が、ムッとしたようにパソコンを睨んだ。

【いくら目立たない道でも、幅の狭いところはダメだ】

【だって、しょうがねーよ。目撃者の目を眩ますために、コンビニから俺の車で逃げて、途中でおまえのミューラーに乗り換えただろ。それまで駐車しておくのに、あの道の脇しかなかったんだからさ】

【とにかくもっと安全な道を考えるんだ。今度やるのは、１日の金曜日だ。それまでに車が直ってくるからな】

上杉君が、教室の壁に貼ってあるテスト日程表をチラッと見た。

１日が金曜日になっているのは、５月だけだ。

【時間はたっぷりある。しっかり調べろ。この程度の遊びで警察にあげられちまったら、たまんねーよ】

【わかった。じゃあな】

そこまででデータは全部だ。

息をのんで顔を見合わせる皆の中で、若武君が真っ先に叫んだ。

「やっぱり犯人は強盗だったんじゃないか！俺の言った通りだ！」

上杉君が少し溜息をついた。

「お前が言った時点では、ただの空想にすぎなかったんだろ。今は違う。はっきりとした事実になったんだ」

抑えるように言いながら、チラッと黒木君を見る。

「どうする？」

小塚君が脇から口を挟んだ。

「決まってる。警察に届けるんだ」

立花さんも頷いた。

途端に、若武君が強く首を横に振った。

「ダメだ。このレコーダーを証拠に使って、犯人を脅し、チャリを弁償させるんだ」

立花さんが怒ったように言った。

「ちょっと若武。こいつらは5月1日に、駅の向こうのコンビニを襲うのよ。それを防がなくちゃならないってときに、なんで自分のことばっかり言ってるわけ！？」

「そうだ」

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