31話 ページ33
次の日、立花さん以外の私達は特別クラスにいた。
昨日小塚君が立花さんに連絡して、今日ここに来るということらしい。
特別クラスのドアが開き、4人が一斉にそちらを見た。
立花さんは一番前の机まで行き、秀明バッグを下ろす。
「成分表を見せて」
声は、少しつっけんどんに響いた。
立花さんの近くにいた上杉君が、一冊の本を出し、その真ん中辺りのページを開く。
「ここだ」
そのページはドイツ語で書かれている。
先ほど目を通して解読はできているから、もしもできそうになければ助けるつもりでいる。
でも立花さんが取りだした辞書の中に、ドイツ語もあったのできっと大丈夫だろう。
皆は、次第に立花さんの周りに集まっていき、傍に立ったり、脇の机の上に腰を下ろしたりして、じっと立花さんの手先を見つめていた。
やがて若武君がハーフパンツの後ろポケットに突っ込んだ両手を苛立たしげに揺すって言った。
「おい、まだかよ」
瞬間、残りの皆が一斉に言った。
「黙れよ」
「立花だって一生懸命やってるだろ」
「待てないんなら、外に出てれば?」
皆に言われてしまった若武君の元気のない声が響いた。
「俺、短気だからさ。許せよな」
若武君から、反省している空気が出ている。
立花さんは、若武君に頷いた。
「いいよ」
若武君は、嬉しそうな声で言った。
「頑張って早くしろよ」
立花さんは、再び辞書に顔を向けた。
子どもは前世でももそれなりに好きだった。
そんな子どもたちの成長を、近くで見れるのはとても新鮮に思えた。
「あったわ![Die Farben] 塗料よ!」
どうやら、考えごとをしている間に見つけたらしい。
「すげえ!」
若武君が、真っ先にそう言った。
「まだ一つだけじゃないの。次、いくから」
授業が始まるまでに、立花さんは成分表の3分の1を日本語に訳した。
残りは、家に帰って調べて小塚君に連絡することになった。
明日には車種の特定もできているだろう。
私の考えでは、明日の夜に彼が動く。
※※※
あくる日は土曜日で、初回の特別クラスの日。
特別クラスは、皆がバラバラに自分のしたい科目を学習するという勉強法を取っていた。
立花さんは算数、黒木君は社会、上杉君と小塚君は国語をするらしい。
皆、自分のニガテなところを特別クラスで補おうとしている。
若武君だけは、自分の得意な算数をやっていた。
私は何となく、誰も選択してない理科を選んだ。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時