27話 途中まで彩SIDE ページ29
「つまり犯人は、この北部の地域のどこかに住んでいるんだ。ところが北部地域は、ガソリンスタンドや郊外レストラン、グラウンドや畑が多くて住宅地は少ない。ただ一つあるのは」
若武が突っ込むように叫んだ。
「新田町のビバリーヒルズだ!」
ビバリーヒルズというのは、2年ほど前に大きな住宅会社が開発して建売住宅を建てた場所のこと。
1億とか2億とかいう値段だったのに、あっという間に全部売れてしまったんだって、ママが驚いてた。
「自転車をバンパーの下に巻き込んだまま走ったら、当然車も壊れるに決まってる。それを承知で走らざるを得なかったんだから、相当焦っていた。つまり犯人は新田町に住んでいる、緑色の外車を持つ人間で、その日は凄く忙しかった奴だ」
※※※
ASIDE
きっぱりと言って上杉君が口をつぐむと、若武君がその目を光らせた。
「よし、捜し出してやる!」
黒木君も頷いた。
「ビバリーヒルズなら全部で32戸だ。片っ端から車庫を覗いて歩いても、そう時間はかからない」
立花さんも意気こんで頷いた。
「犯人を捕まえるのよ」
しかし上杉君は、首を横に振った。
「今までの話は、全部憶測だ。はっきりした証拠はまだ一つもない。それに車は修理屋に出してしまって、車庫には置いてないかもしれない。あるいは、もう売り払ってしまっているということも考えられる」
立花さんと若武君が顔を見合わせた。
黒木君がからかうような声で言った。
「じゃ、これからどうするんだよ。言えよ、上杉教授」
上杉君は少し笑うと、レンズの向こうのつり上がった目を一層鋭くした。
「証拠を作るのさ。そうすれば警察を動かせる」
証拠がないと警察は動けない。
それで手遅れになってしまうこともあるけれど…。
若武君が生き生きとした声を上げた。
「よしっ!まず、塗料とドロとを分析しよう。自動車の車種と年代をはっきりさせ、そして俺の自転車がビバリーヒルズにあったことを証明するんだ。小塚、お前の役目だぜ。できるな」
小塚君は、戸惑ったように答えた。
「塗料とドロの分析は大丈夫だけれど、塗料から車種を特定するためには、各社がそれぞれの車に使っている塗料の成分表がなかったらダメなんだ。でもそれって企業秘密のはずだぜ」
若武君は少し考えてから、黒木君に向き直った。
「黒木、お前、塗料の成分表を手に入れられる?」
黒木君は、静かに口を開いた。
「できるかもしれない。やってみよう」
若武君は元気よく頷いた。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時