25話 彩SIDE ページ27
「よく見てくれ。かなり傷ついてるだろう。その傷の中に所々緑色が入っている」
私は自分の目でそれらを確認した。
確かに傷の中に、刷り込んだように緑色が見える。
「小塚、これらについて説明してくれ」
上杉君に言われて小塚君は、自分の手のひらを私達の前に差し出した。
その上には、緑色でヒラヒラした皮のようなものが乗っていた。
「自転車の中から取りだしたんだ。これは塗料だ」
塗料?
「金属や木の表面に塗るものだ。色々あるけど、これは特殊な塗料だ。僕の考えでは、多分自動車の塗料だと思う。自動車の塗料っていうのは、ウレタン系とかクラッカー系とかいろいろに分かれていて、一台の自動車の中でも部分によって違う物が使われるんだ」
私は驚いた。
そんなこと、ちっとも知らなかった。
「それで自動車のメーカーによって、それぞれ特徴のある塗料を使っているから、分析してみれば、どこの会社の何年型の車の塗料かはすぐわかるんだ。後でやってみるけど、この色の感じからしたら外国の車だと思うな。BMWとか、アヴディとか。上杉、これでいい?」
「オッケー。次、桜田」
軽く言って上杉君は、桜田さんに話を引き継いだ。
『なぜ自転車に、車の塗料がついたか。答えは簡単よ。この二つがぶつかったから。といっても、自動車が一方的にだけど。それで、あの道幅を思いだしてみて。自動車が通るには少し狭い。それを無理やり通ってきたから止めてあった自転車に引っかけ、そのまま通りすぎようとした。それで盗難防止用のチェーンが切れたのよ』
私の心の中で、それまでずっと謎だったことが、そのときするっと解けた。
人間の力では切れないはずのチェーンが切れた原因は、これだったんだ!
『この壊れ方から見て、自転車は自動車のバンパーの下か何かに食い込んで、取れなくなってしまったんじゃないかしら。それで引き摺ったままとにかく走って、人目につかずに車を止められるところまで行った。そして工具を使って自転車を外し、ここに捨てたの。あちこちに工具の跡があるわ。自転車の一部が無くなっているのは、引き摺った時に折れて取れたか、自動車から外す時にバラバラになったか』
うーん、すごいっ!
私は感心して上杉君と小塚君、桜田さんを見つめた。
偉いなぁ!!
「じゃあさ」
若武が、綺麗なその目に熱っぽい光を浮かべて言った。
「犯人の家が新田町だっていうのは、どこからわかるんだ?」
上杉君はニヤッと笑った。
147人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時