21話 ページ23
電話の向こうで、黒木君が息をのんだ様な気がした。
《…よくわかったね。自転車っていうより鉄クズだね。どうやったらこんな風にできるんだろうって思うよ。若武にはとても言えないよ。酷すぎる。桜田、明日、秀明に行く前に、野村グラウンドまで来てくれ。これからどうするか相談したいんだ。若武を除いた皆で。例えば、若武には内緒でカンパを集めて、新しいチャリを買ってやるとかさ。30分もあれば結論が出ると思うから、4時15分ごろ》
『わかったわ』
話はついたはずなのに、黒木君は電話を切ろうとしない。
『どうしたの?』
《…桜田さ、もしかして風呂で電話してる?》
『そうよ。ちょうど入ってるときにかかってきたから』
《それは悪かった。けど、これからは風呂で男と電話することはオススメしない。変な妄想されるかもしれないだろ》
…なんだ、そんなこと。
『もちろんわかってるわよ。黒木くんだから出たの。あなたのことはそれなりに信用しているからね』
黒木君は暫しの無言の後、大きく溜息をついた。
《…ありがとうと言っておくよ。おやすみ、また明日ね》
そう言って、通話が切れた。
…誤魔化せていたらいいけど。
どんな時でも電話に出る、前世の癖だ。
最近、前世の行動が表に出てくることが多い。
気が緩んでいるのかもしれない。
これからは、もっと上手く閉じ込めないと。
【××××!!】
もう、あんな辛い人生は送りたくないから。
※※※
学校が終わると家で荷物を取って晩ご飯を買い、秀明に向かう。
いつものルーティンと違い、今日は秀明の前に野村グラウンドへ。
バス停で降りると、立花さん以外は揃っていて、その中には若武君もいた。
立花さんも来ると、黒木君がこっそり教えてくれた。
「小塚が、モラしたんだ」
あらあら。
小塚くんは、決まり悪そうに言った。
「だって、僕のところにきた情報はいつも若武に流すことになってるからさ、つい」
若武君がハーフパンツの後ろポケットに突っ込んでいた手を出し、小塚君の頭を引きよせた。
「こいつ、俺に電話してきて言いやがったんだぜ。明日、4時15分に野村グラウンドに集合だ。若武には内緒で、ってさ」
小塚君は、ムクれて若武君の腕を振り払った。
「うるさいな。うっかりしたんだよ。誰にだってあるじゃん、そういうこと」
上杉君が工場の方に歩き出しながらこちらを振り返った。
「行くぞ。黒木、お前のコネだろ。先に立てよ」
147人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
悪女ガン無視する系のバイトの話3【ブルーロック】
【選考型募集企画】どれ〜ちゃん!【応募受け付け終了】
脱出劇の幕開けを告げる、スポットライト【選考型募集企画】【二次募集終了】
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時