17話 ページ19
「それは、あのチャリが普通の自転車じゃなくて、特別なものだったからだ。つまり、自転車工場でチャリを作っているとき、何かが起こって、あのチャリの部品の中に重大なものが紛れ込んだんだ。工場に逃げこんできた宝石泥棒が、捕まりそうになって、目の前にあったあのチャリのハンドルの中にそれを埋めこんだとか。で、そいつは、あのチャリに自分だけに分かるマークをつけておいたんだ。そして工場からずっと狙いをつけてきて、ついに盗んだんだ」
…とても夢のある推理ね。
上杉君が、腕を伸ばして、小塚君の頭を小突いた。
「小塚！お前、若武に[ルパン対ホームズ]と薊の少女シリーズの[盗まれたコンポ]貸しただろ」
「だって、黒木が貸してやれって言ったんだぜ」
小塚君は不服そうな声をあげ、黒木君がほっと溜息をついた。
「悪かった。今度は、ロアルド・ダールの心理サスペンスでも読ませてやってくれ」
そう言いながら、黒木君は立ち上がり、立花さんを見た。
「立花、嫌がらせのセンを調査に行こう」
立花さんは頷いてから、皆を見回した。
「盗難防止用のチェーンは、素手じゃとても切れないって兄が言ってた。逃走中の強盗なら、チェーンのついてないのを探すだろうって。それに強盗は車で逃げたんでしょ。だから第４のセンはないと思うな」
上杉君が、眼鏡の向こうで一重瞼のきつい目を、一瞬光らせた。
「立花の兄貴って…もしかして立花祐樹？陸上とラグビーやってて、高等部のトップクラスにいる？」
立花さんが頷くと、若武君が呆然として立花さんを見た。
「ウソ…」
信じられないといった表情だ。
「ほんとよ。名字が同じなのが分かんないの。立花なんて滅多にいないでしょ」
立花さんがそう言うと、若武君は悔しそうにパチンと指を鳴らした。
「じゃ昨日電話した時、同じ家の中にいたんだ。ちきしょう！知ってたら代わってもらったのにな。立花祐樹って、カッコいいもん。背なんてすげえ高いし。俺ファンなんだ」
「僕も」
小塚君が言って、少し恥ずかしそうに俯いた。
「この間グラウンドでトライするとこ見かけたけど、凄かった。男なら誰だって、あんな風になりたいと思うよ」
黒木君が少し笑った。
「それにモテるんだ。中等部や高等部の女たちが、寄ると触るとウワサしてる」
確かに私も、彼のウワサは両手じゃ足りないくらい聞いたことがある。
上杉君が大きな息をついて、天井を仰いだ。
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです！勉強になります……。これからも、応援してます！ (2022年5月29日 16時) (
レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです！もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです！今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね！無理せず頑張ってください！ (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Ｒｅｉさん» コメントありがとうございます！「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Ｒｅｉ - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています！ (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きょっちー | 作成日時：2019年7月11日 19時
