14話 ページ16
若武君は、ムッとしたように黒木君を睨みながらも計算用紙を取り出し、それに名前を書き始めた。
「学校名も書けよ。秀明の奴なら、クラス名も」
始めのうちは、全員がそれに見入っていたけれど、やがて私しか見なくなってしまった。
それから少ししたとき、黒木君が話しかけてきた。
「よく見てられるね」
『ここまで思い当たるなんて、逆に面白いもの。どこで止まるのか見届けようと思ってね』
黒木君は苦笑して言った。
「いい性格してるね」
『ありがとう』
小塚君が、感心したように首を横に振って言った。
「若武…こんなに恨まれてて、今までよく生きてこられたよなあ…」
若武君はそれには答えず綺麗にその表を仕上げると、満足そうに眺めてから切り取って立花さんに差し出した。
「こんなもんだと思うな」
表の中には、若武君のご両親と弟君の名前も入っている。
全員、マウンテン・バイクを隠したり乗り逃げするだけの動機があるらしい。
「怪しいと言えば、怪しい」
きっぱりと言った若武君に、小塚君が溜息をついた。
「お前んとこの家庭って、不毛だよなあ…」
その頭を、若武君がコンと小突いた。
「捜査に感情を入れるなって、さっき言ったぞ!俺のマウンテン・バイクには、家庭を崩壊させるぐらいの価値があるんだ」
若武君は立ち上がり黒板に歩みよって、チョークを取り上げた。
「犯人は、この三つの条件に当てはまる人間で、しかも犯行時間である17時5分から21時3分までのアリバイがなく、その上チェーンを千切る怪力の持ち主だ。同時に、ダイヤル錠を開けることができない頭の持ち主でもある。これだけの条件が重なれば、きっと見つけることができるはずだ。手分けして当たろう。…それと、桜田、お前何か得意なことはあるか?」
『運動は得意よ。それと、機械の分解や組み立てが好きね。自転車ぐらいなら自分で修理できるわ』
若武君は頷いて、カタカタとチョークの音をさせながら、2番と3番の隣に皆の名前を書きこんだ。
2番が、黒木君と立花さん。
3番が、上杉君と小塚君、私だった。
「若武、お前は何するつもり?」
若武君は、少し気取って両手をウエストにあて、私達を見回した。
「俺はリーダーだ。仕事は、皆を纏めることに決まっている。本物のリサーチ事務所でも、トップは歩き回らないんだ。デスクに張りついて、皆からの連絡を待ってるんだ。皆、分かったことは俺に報告してくれ。それを聞いて、俺がこれからの方針を立てていく」
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百合香(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがすごくよく、本当に原作のような話の進み方が好きです!勉強になります……。これからも、応援してます! (2022年5月29日 16時) (レス) @page3 id: 26b82cca33 (このIDを非表示/違反報告)
トメ - きょっちーさん、はじめまして!トメと申します。きょっちーさんに感想を送るためにアカ作りました笑このシリーズがとても好きで感想を送りたいと思っているうちにしばらく浮上されなくなってしまったので、再開してくださってとっても嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年4月16日 13時) (レス) @page47 id: 702d0afd33 (このIDを非表示/違反報告)
ありしゅ(プロフ) - きょっちーさん、おひさしぶりです!もう浮上されないのかと思っていたのでとても嬉しいです!今までの書き方もよかったですが、今の書き方もいいですね!無理せず頑張ってください! (2022年4月7日 16時) (レス) id: bde42b2272 (このIDを非表示/違反報告)
きょっちー(プロフ) - Reiさん» コメントありがとうございます!「おもしろい」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。これからも読んで下さいね (2019年7月21日 13時) (レス) id: 22142a784e (このIDを非表示/違反報告)
Rei - とてもおもしろいです。読むのが楽しみになっています! (2019年7月20日 14時) (レス) id: 6035a3040f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きょっちー | 作成日時:2019年7月11日 19時