7話 ページ7
そこまで言って彼から自分に向けられた瞳に
反射的に口をつぐむ。
光を宿していない瞳だがその中に嫌悪や憎悪が含まれていることにすぐ気がついた。しまった、触れてはいけないところだったか。
放たれた殺気とも呼べるものに、私は肩を揺らして冷たい汗をかいた。
そんな私の様子に気づいたのか鶴丸さんハッと我に返って目頭を押さえて頭を振る。
「…すまない」
「いえ、大丈夫です。」
ここはこういう場所だった。普通なら馬鹿らしい質問や会話を彼等にとってはトラウマを呼び起こすものなのかもしれない。注意しなければ。
大丈夫だと手を振る私に彼は心底不思議そうな顔を向けた。
「…君は食事をしたいと思うのか?」
「鶴丸さんは食べてないんですか?」
「刀剣には必要ないだろう」
「たしかにそう言われればそうですけど。今は人の身体がありますし…」
私の言葉に鶴丸さん眉を寄せて、ピキリとまた部屋の空気が凍る。私はもしかして敢えて地雷を踏んでいるのかとさえ思えてきた。
私は潜入捜査には向いていない性格らしい。
そんな自分に呆れながら、言葉の撤回をしようと口を開く。…が、
「人の身体を得て良いことなど一つもなかった。」
と、返ってきて その言葉は飲み込んだ。
これは彼の本心からの叫びだろうか。
瞳に宿す嫌悪は普通に考えれば審神者だが、それだけとは思えない。一体、何に向けられているのだろうか。
口を閉じてじっと見つめていた私に鶴丸さんは困った様に眉尻を下げた。
「すまない。君に言っても仕方ないな。
何か食べたいのか?それなら、出陣先で取ってくるが」
「いえ、結構です。」
即答した私に鶴丸さんは「そうか」と、目をそらす。
「でも、この本丸には調理場は無いんですか?」
「調理場はあるぞ、 材料も無いことはない。
本丸開始時から置いてあるが腐ってはいないはずだ。」
「… 開始時…」
一体何年前だよ。
少しだけ顔が引きつった。そんな私の気持ちを察したのか鶴丸さんは言葉を付け加えた。
「食材は腐らない様になってる。審神者部屋からは離れているし案内してやってもいいが…」
少し不安そうな顔を向けられたが、部屋から出れるのは本丸の状態を見る 貴重な機会である。
これを逃すわけにはいかない。
「是非!お願いします!」
私は喜んでお願いした。
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サザンカ - 凄く面白かったです!!!!!つい見入ってしまいました。続編などがあるのでしたら楽しみにしています! (2019年10月11日 19時) (レス) id: 381a12205a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:杏子メロンパン | 作成日時:2019年6月8日 18時