遡行軍のスパイの話 (ページ40)

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40話ページ40

早朝、ほとんどの人がまだ寝ている時間帯。

しかし、ドタドタと走る足音と

「おい！政府の人間が来たぞ！！」
という、叫び声で私は目を覚ました。

動けるものは一斉に役人が向かった審神者部屋へと駆け出す。

戦闘服を着て、全ての荷物を持った私は
彼等の後をこっそりと追い、物陰から
その様子を覗いた。

「一体朝早くからなんなんだ‼」

役人に叩き起こされて囲まれていた審神者が声を上げる。

「審神者No.〇〇▲〇〇7番。貴方に逮捕令状が出ています。現時点で、貴方の審神者としての全ての権利を剥奪、そして政府までご同行願います」

「逮捕だと！？一体なんの権限があって俺を」

「刀剣達への酷い仕打ち、手入れの放棄。そして、破壊データを偽るという不正、その他諸々。
貴方の担当はもうすでに捕まり全てを認めました。
この場での弁解の余地はありません。
後は法廷でどうぞ」
役人はそう言って指示を出し
後ろについていた部下が審神者の腕を掴んで
連行する。

ふざけるな！離せ！と、声を上げる審神者に構うことなく、ズルズルも引きずっていった。

そんな審神者の後ろ姿を、刀剣達は茫然とどこか魂が抜けたかのように見つめていた。
誰も引き止めたり、声を上げたりはしない。
安堵や喜びよりも驚きの方が勝ってしまう。
誰もが互いに顔を見合わせた。

ふと、我に返った骨喰さんが起き上がれない子達に伝えてくると、言ってその場から駆け出す。
それを機に周りも動きを再開させた。

そこに部屋から出て来た役人がいきなりパンと手を叩く。
その瞬間本丸の空気が変わり、彼等の負っていた怪我が一瞬で消え失せた。
彼等が自分の手を見つめ、血の色が消えている事に驚きすぎて現実に戻ってこれない中
役人がペコリと頭を下げて、やはり放心している一期一振に話しかけた。

「私は、政府の監査部に所属しているものです。貴方がデータを渡してくれた刀ですね」

「……データ？」

「はい。審神者の不正の証拠のデータです。USBを貴方が係の者に渡したと聞きましたが」

「ゆーえすびー？」

慣れない横文字に皆が首を傾げる。
その様子に役人は何かを確信したような顔をした。