遡行軍のスパイの話 (ページ25)

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25話ページ25

勿論審神者はこの道を知っているはずだ。

こちらに近づいてくるか、と審神者の反応を息を潜めた。
押入れの戸がガラッと開かられる。
私と審神者を挟むのは薄い回転する扉だけだ。

「…… 気のせいか…？最近、やけに視線を感じるんだがな。」

審神者はそう呟いてガサゴソと何かを持った後、
隣の部屋に移動したのか
動作の音が完全に聞こえなくなった。

私はホッと胸をなでおろす。
手にはまだ汗が残っている。

この審神者、やけに感がいい。
流石に肝を冷やしたがバレなかった事にひとまず安心した。

まさかあの部屋が丁度裏通路に繋がるなんて。
まさに奇跡。
これで、私は晴れて審神者部屋に侵入できる道を手に入れたわけだ。
しかし、この道にはリスクが伴う。
もし、審神者がこの道を使えば私と鉢合わせ、もしくは部屋にいるときに現れるかもしれないのだ。

でも、これでようやく核心に近づける。

審神者のパソコンデータを奪う。
それが、私の最終任務だ。

ーーーーーーー
突破口を見つけた、でも焦ってはいけない。
データを奪うのにはどんなに急いでも少しばかり時間がかかる。
出来るだけ安全な時期を見定めなければいけなかった。

私はまず部屋に戻り回転扉の前に布団を敷き詰めた。
これでもし審神者が来ても時間がかせげる。
後は審神者が出かけたりする日があればいいのたが、そういうのは、刀剣達に聞くしかない。
自分からは出られないため鶴丸さんのように向こうから来てくれるのを待つしかないが…鶴丸さんは今日はもう来ないだろう。

まぁ、彼は気にしてくれているのか
来る頻度が高いが、どうも策士な感じがして
雑談ならともかくこのような重要な事は聞けない。
それに、彼の先程の行動の真意が分からない。
無意識に足が向いたとか、救われたとか、
優しい言葉や態度に対してこんな疑心を抱く自分が嫌になるが、気を抜くと本当にボロが出そうである。さっきも雰囲気に流されて身体が動かなかったし。だから注意しないと。

そう考えると出来れば他の方に聞きたい。

どうしようか、と押入れの中で
悩んでいると部屋の外から誰かの足音が聞こえてきた。
誰だ、と身構える。

「…いるかな？」

障子が開かれると共に聞こえたのは
燭台切さんの声だった。