遡行軍のスパイの話 (ページ11)

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11話ページ11

盛り付けた後は手に塩をつけて握っていく。

「よし、完成。」
炊いたご飯を全て握り終え、顔を上げると
二人は私を見つめていた。
勝手な事をして本当に申し訳ない。

「… 無理を言ってごめんなさい。」
「いや、いいんだよ。君が悪い訳じゃない」

燭台切さんは手を振って否定してくれるが、
鶴丸さんは何も言わなかった。

「あの、おにぎり食べませんか？」
せめてものお詫びにと尋ねた。

「えっ」
「一度も食事をしたことがないと聞きました。」
「え、いや、あの。」
戸惑う燭台切さんと逆に
「俺は結構だ」
と、冷たく鶴丸さんが言い放つ。

「… 食べませんか？
腹が減っては戦が出来ないと言います」
「要らないと言っているだろう」

鶴丸さんの顔がどんどん険しくなっていった。目には先程も宿していた嫌悪と憎悪。
鋭い目つきで睨まれたが、でも…と声に出した。

「さっきも言ったが人の身体を得て良いことなんて一つもなかったんだ。人間の行いなんて虫唾が走る」
「鶴さん！」
燭台切さんが止めて、鶴丸さんは気まずそうに私から目をそらした。

散々な目にあってきたのだから彼の言うことは最もであると思う。
人に対して嫌悪を抱く鶴丸さんはまるで、かつての私のようだ。
でも、敵である彼等に同情なんかしない。
そう思いながらも、心に芽生えた何かに私は必死に気づかないふりをした。