遡行軍のスパイの話 (ページ12)

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12話ページ12

「…無理にとは言いませんが、食べる事は生きる事です。折角の人の身体を得たんです。辛いことだけなんて悔しくないですか？」

私は真っ直ぐに二人を見つめた。

どんなに辛いとしても人間は生きていくしか無い。でも、それは私達だって同じだ。
この世に生まれた以上、折れる日まで存在していかなければならない。
たとえ、酷い扱いを受けても…。

私の言葉に二人は少しの間固まっていたが、ハッとしたように燭台切さんが
皿に手を伸ばした。

真っ白いおにぎりを手にとって
少し躊躇った後口をつける。

「……美味しい…んだと思う。」
小さく呟かれた言葉に私はホッと息を吐いた。

「美味しいよ。鶴さん」

彼の言葉に鶴丸さんは「いや、俺は…」
と、言ったが燭台切さんの目に押されたのか、ゆっくりと皿に手を伸ばす。

すると、口に入れて噛んだ瞬間見開いた
彼の瞳からポロポロと雫が落ち始めた。

「え、鶴丸さん？大丈夫ですか？」
流石に驚かされた。
塩をかけ過ぎたのかもしれない。
慌てて手ぬぐいを持って側による。

「…違うんだ。 ……驚いた、こんなに美味しいんだな…」

そう言って、もう一口もう一口と食べ進める二人を私は戸惑いながらも見守っていた。

沢山作ったおにぎり包んでを良かったらと二人に渡す。今度は拒否せず、むしろ感謝の言葉を述べて快く受け取ってくれた。

「数個、遠征に持って行こうかな。」
「え、これから遠征があるんですか？」

ふと、燭台切さんの溢した言葉に私は素早く反応する。

「うん。資材集めのためにね。」

審神者が資材を鍛刀ばかりに使うため枯渇しているらしい。かといってあれば手入れしてくれるわけではないけれど。

「遠征はやっぱり疲労が溜まるからね。」
疲労回復の団子は買ってもらえないから
正直すごく助かるよと、笑顔で言われて
私はなんとも言えない顔をしそうになった。