遡行軍のスパイの話 (ページ2)

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2話ページ2

…おいおいおいおい！

今は刀の姿である私は心の中でつっこんだ。

あろうことか、あの大太刀私をぶん投げやがった！

厚樫山へ到着したら、やっぱり来たよ刀剣男士。今日の彼等は負傷者が多い気がしたが
そんなのこっちには知ったこっちゃない。
私を持っていた大太刀は真っ白な刀剣と刀を合わせる。まぁ、真っ白といっても怪我して赤く染まってるんだが…
しかし、負傷してても彼等は強かった。
こんなに近くで彼等の戦いを見たことはなかったが、本当に軽やかかつ一撃が重い。
良い研究材料になりそうだ。

そして、負けそうになった大太刀が
邪魔だといわんばかりに私をぶん投げたのだ。
後で覚えとけよ！と心の中で悪態を吐くが、後などありもせず
砂の様に大太刀は消えてしまった。

カランとその場に転がっている私を
目の前の白い刀剣が拾う。
彼は私を手に持って少し首を傾げたが、
気にした様子もなく仲間の元へ向かった。

「…皆無事か？」
「… なんとか…」
「三日月殿はおりましたか？」
「…いや、駄目だった。」
「…短刀は見つけたけど、拾わなかった。
だって…可哀想だから」
「… それが正解でしょう…」
残りの遡行軍も倒してしまったみたいだ。
これは本気で私達も対策を考えないと、遡行軍が無駄死しているみたいになってしまう。

… しかし、彼等は何故か勝ったくせに顔が暗かった。
どうしてだろう。心なしか目が死んでいる様に感じる。

「俺は見たことない刀を拾った。普通拾われたら刀剣男士なら姿を見せるもんだが、現さないから… 多分、唯の刀かもしれない…」
「唯の刀を拾ってどうするんですか…」
「そんなもので、あの人が満足するはずないでしょう」

嘘、それ本当？すぐに姿見せるの？
知らんかったわ。
この雰囲気はちょっとやばいかもしれん。
時間差だけどこのまま捨てられる訳にはいかない。
私は少し焦って
しょうがない、せーのっ！
と、力を込めた。