遡行軍のスパイの話 (ページ1)

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1話ページ1

私は、世の中にはいろんな人間がいるように
刀剣にだってそれぞれ抱えているものがあると思う。人に愛されてきたのなら良いが、私の様に忌み嫌われてきた刀剣だって少なからずいるのだ。そんな私達は当然、時の政府になんて協力しない。ならばどうするのか。
勿論、行き先は唯一つ。
歴史修正主義者の本拠地だ。
私は戦闘は余り得意ではない為、偵察部に所属し、どこの時代での歴史改変が有効か調べたり、敵である刀剣男士や審神者の調査などを行なっている。
その甲斐あってか、偵察や隠蔽は得意だし、戦闘服には刀(自分)だけでなく、小型カメラや双眼鏡などの機器が装着されていた。

自室のモニターで研究していたある日、私の元に上からの指令が届いた。
「… スパイですか？」

手紙を咥えてきた短刀を見つめる。
答えはしないがコクコクと頭を振る姿を見て
本気だということを理解した。

「… 結構リスク高いと思うけれど、仕方ないか。拝命したと、お伝え下さい」

私の言葉に安心したのか短刀は頭をペコリと下げる。私はいつものように左の引き出しから昆布を出して投げると、犬のようにパシッと食い付いて、満足したかのように部屋を出て行った。
扉が閉まった瞬間にはぁ～と、大きなため息がでる。

指令内容を要約すると
ドロップした刀剣のフリをして
本丸に潜入し情報を探って来いとのことだった。決行日は明日。厚樫山への出陣部隊に同行するらしい。

恐らく最近やけに強い刀剣男士が現れているのがこの調査の理由だろう。
同じ顔なのに、服装が前と少し違う。そして、とんでもなく強い。

まぁ、命令なのだから嫌がったって仕方ないのだが…いかんせんリスクが高い。
バレたら敵の本拠地である。
彼等に囲まれたら情報を持って逃げ切れる気がしない。
でも、やるしかないのだ。

私は机に置いていた飲みかけのコーヒーをぐいっと飲んで、明日の為の準備を開始した。