捻れた世界のアラビアンナイト 中編

第十四夜 ページ24

目の前の麗人からの提案に、ジェニが思ったことは、輝石の国に伝わるフェアリーゴッドマザーのようだと、どこかズレた感想だった。

妖精も様々で、人間に好意的なものもいれば、人に悪戯をするもの、命を奪おうとするもの、障害として立ちはだかるものもいる。

気まぐれで怖い伝承もあるが、それと同じくらい、人間が絶望の淵に陥った時に、手を差し伸べる妖精の伝承も残っている。

特に、輝石の国に伝わる舞踏会に行くドレスがなく、泣いていた女の子を助けた話は有名だ。

ジェニの中には物語によって作り上げられた妖精像がいくつか存在していた。

そして、あろうことかジェニは、タイミングがタイミングなだけに、現れたマレウスに対して優しい方の妖精像を重ねてしまったのである。

あ、この人、こっちのタイプなのか…と。

闇の眷属であるマレウスはどう考えても属性が異なるのだが、それを指摘してくれる人間はここにはいない。

｢…解けるんですか？｣
｢その程度、解けた織物を織り直すよりも容易い」

もし、これが人であったのなら、魂胆の見えない善意は恐ろしいと即却下だっただろう。
しかし、ジェニが妖精と直接顔を合わせたのはこの学園に来てからであり、まだジェニの中には妖精に対するイメージが少しばかり残っていた。
そのため、マレウスに対して恐れと同時に微かな夢を抱いていてしまったのである。

その結果、

｢すごい…あの有名なフェアリーゴッドマザーみたいですね」

マレウスを凍りつかせる発言へと至ってしまった。

第十四夜→←第十四夜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す