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二十五話 〜過去編6〜 ページ27

彼氏さんのお話


師の家に逃げ込み、中学生にまでなった女の子は、遂に彼氏が出来ました。

ある程度ヤンデレにも慣れてきた女の子は、告白されたときに病んでないと感じ、それも決め手で付き合うことになりました。

病んでないと思ったのはまやかしだったかも知れないですが。

まぁ、言い分を聞けば、少しずつだから違和感に気付かなかった、と申してはいました。



藍香「あのね、私・・・海外公演が、決まった。一年くらい、海外に住むことになる」

彼氏と歩く帰り道。

気が重いことを報告する。

普通のカップルなら喜ぶこと、なのかな…。

海外に行くだけでなく、住むなんて少しだけ独占欲が強い彼氏が許してくれるかどうか。

ジュン「今何て言ったっすか〜?」

ほら、顔は笑ってる筈なのに、目は笑っていない。

ジュン「何て言ったって聞いてるんすけどね〜」

藍香「海外公演が、決まりました」

何となく敬語で喋ってしまう。

ジュン「良いと思っていってるんですかねぇ?」

やっぱり…

藍香「でも、お世話になっている人の頼みだから…断れないよ……」

ジュン「でも、じゃないっすよぉ?」

藍香「・・・だって…」

言おうとする前に口を噤む。

ジュン君のハイライトが消えた。

ジュン「藍香、俺を捨てるんすか?悪いところ、あったんすか?全部直すから行かないで・・・」

藍香「捨てないよ…戻ってくるから…信じて‥」

ジュン「・・・・・・そっすね!我が儘言ってすんません」



そう言って普段通りに見えたからかは分からない。

ただ、この時の緩みきった警戒心は警鐘を鳴らさなかった。



そうやって、海外渡航前日、私はジュン君に呼び出された。

呼び出された場所は人気の少ない路地。

藍香「ジュン君?どうしたの?こんな所に呼び出して」

ジュン「藍香、藍香を殺せば、コロセバドコニモイケナイッスヨネェ?」

藍香「ぅ・・・ぇ?ジュン、君?大丈、夫?」

大丈夫じゃない、その位分かる。

だって手には刃物が握られているのだから。

それが何かなど考えられるほど悠長ではない。

刃物を持って近付いてくるジュン君。

藍香「ど、うした、の?」

ジュン「大丈夫っすよぉすぐ逝きますからねぇ」

嗚呼、きっと心中しようという事なのだろう。

分かっても、逃げられない。

努力したのに、役に立たない。

こんな時に限って。

ジュン「一生、一緒っすよぉ」

藍香「・・・・・・・・・!」

視界の端に見慣れた赤色と灰色を見たのを最後、私の意識は途切れた。


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作者名:エル | 作成日時:2022年9月29日 20時

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