食べませんか ページ20
「恋人っていうのはね!?実際…ぶつぶつ」
お茶子ちゃんが恋人について淡々と話しているが、それをすべて聞いていたら私がおかしくなりそうだ。
軽く流しつつ、蕎麦を頬張っている轟さんを見つめる。
そんな私の視線に気付いたのか、彼は私を見た。
「食うか?」
「いや、いらない」
轟さんってこんな性格だっけ。
久々に会うと、結構変わった感じがする。
しかしまぁ、なんだろうな。
ヒーローってやっぱ忙しいし、都合も全然合わないし、その上でメールや電話よこせは流石に図うずうしいだろ…。
でもなぁ…。そんな関係をなんなくこなせるようになりたいのは、夢…なんだけど。
お茶も残り少なくなり、私は澄み切った青空を見上げる。
「もういっそのこと別れたらどうだ」
「嫌だよっ!!」
轟さんの突然の発言に、視線を空からまた轟くんに向ける。
同時に驚きのあまり席から立ち上がって大声を張り上げてしまった。
「…わりぃ」
「いや…」
轟さんはびっくりしたように、そして自分の発言に謝罪した。
私も驚きすぎだな…。
改めて椅子に座りなおす。
「ならさ。お試しデートしてみない?」
＿＿
「ねぇ…やっぱやめない?」
「ダメ」
あの発言から事態は一変、なぜか暇な私と轟さんで、一日デートをすることになった。
どうしてそうなったのか?そんな疑問、彼女にして欲しい。
そして今、私の手は轟さんの手と繋がれた。
「轟さんは、嫌じゃないの？」
「あいつの為なら別に」
「……」
そういうことじゃないんだけどなぁ。
「じゃあ一日デート、スタート!!」
＿＿
「どうする？」
「俺はお前がしたいことに合わせるから」
「…そういうのが一番困るんだよなぁ」
お茶子ちゃんは私たちを置いてどこかへ行ってしまった。
まぁ、デートさせているぐらいだし、まず二人きりにならないと意味はないわな。
手をつなぎながら街中を歩いていても、特に何かをしたいわけでもないし、買いたいものもない。
「あ、パフェか」
めぼしいものがない中、丁度期間限定のスイーツをだしているお店が目に入る。
いちごクリームに、いちごを乗せた、theいちごパフェ。
なんて感じの看板にどでかくあるせいか、何もすることが思いつかない私にはこれがとても救いに感じた。
「食べるか？」
「うん」
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作者名：雪飴 | 作者ホームページ：https://twitter.com/_kz_0
作成日時：2017年7月24日 0時
