プロローグ ページ1
──── 夢野幻太郎が彼女と出会ったのはつい最近の出来事である。
それは幻太郎が渋谷のとある公園のベンチに座って自身の書いた本を読み返している時のことであった。
ふと、読んでいる本に影が出来て目線を上にやると、一人の少女が目の前に立ちはだかっていた。
そして彼女は幻太郎を数秒見た後に「あっ」と声をあげる。
「や…やややっぱし!夢野幻太郎先生ですよね!?」
少女の戸惑いの声。
今度は幻太郎が目の前の少女を数秒見つめ返した。
そしてふっ…と笑い、「さぁ、どうでしょう」と一つ答えて本の頁をめくる。
──── 知っていますよ。
幻太郎はわざと少女から目を逸らして本に目を落とす。
しかし、頭では少女のことを考えていた。
(最近、小生に距離を置きつつも引っ付いてくるストーカー…。事務所などがバレるのは痛いからと、彼女が諦めるまで歩き尽くしたり、人混みを利用して撒いたりして来たが…。最近は頑固になって引っかからなくなった子…。ならばと思い、釣ろうとこの公園でおとなしく本を読んでいたら……やはり来たか)
そう、彼女は最近幻太郎の後を付け回すストーカーであった。
幻太郎自身は少女の見え見えなストーカーに気づいては居たが、特に何をして来るでもないので無視をしていた。
とは言え、事務所などにまで付いて来られては流石に迷惑なので、今回このような対応を取ったのだ。
「いえ!夢野幻太郎先生です!ぜーったいにそうです!」
「おや…凄い自信ですねぇ…その根拠は?」
「池袋にある、とある情報屋に探ってもらいました!」
「……それはそれは」
乱数のようなことをする…。
などと、幻太郎は自身のチームメイトの一人を思い返した。
「……まぁ仮に余がその…ユメノゲンタロウなる人物だとして、貴方はどうするのですか?」
「はい!私、あなたのストーカーになりたいです!」
彼女の元気な声が響き渡る。
しかし、その場の空気が変わった気がした。
しかも夏だというのに何故か温度が一気に低下したかのように寒くなる。
幻太郎はなんとも言えない顔で一言、目の前の彼女につい素でこう言った。
─── 「…は?」
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M0S(プロフ) - 凄く面白いです!続き期待!!応援してます!! (2018年12月24日 0時) (レス) id: 22a91c5a43 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天高 星 | 作成日時:2018年9月10日 20時