082・ 看病 ページ34
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彼の家に着くと、ノックをしてドアを開けた。幸い鍵は開いていた。
「お邪魔しまーす…」
寝室に行くと、辛そうに寝ていた。
「孝宏…」
「ん…A……?」
「大丈夫?」
「な、んで…」
「心配だからよ…何も冷やしてないじゃない…」
そう言い、Aは櫻井の額に手を当てた。熱さまシートどころかタオルもなにもしてない。
「熱い…もう一度熱計ろう?」
「A…帰ってくれ……伝染したく…ないんだよ」
「大丈夫よマスクしてるから」
「いいから…ホント……帰れよ…夜は…神谷のとこ行かないと…ゲホッ、ゲホッ!」
「嫌よ。神谷さんのとこには行かない」
「でも…」
「いいから黙って!大事な彼氏が具合悪いのにほったらかして友達の誕生日祝いに行けるわけないだろ!」
「A……」
「孝宏だって旅行に行った時、心配して私の所に来てくれたじゃない…それと一緒。ね?」
Aはさっきの強い口調とは裏腹に優しく微笑んだ。
「ありがとう…ほんとは傍に居てほしい……」
「よし、素直にそう言えばいいの。熱計るね?」
「ああ…」
櫻井に体温計を挟む。その間熱さまシートを貼ってあげた。
「脇の下に貼るね」
「うん…ごめんな」
「いいのよ」
両脇に2枚貼る。ピピッと体温計が鳴った。
「38.9!? 電話した時より上がってる…孝宏、喉痛い?」
「かなり…痛い……」
「扁桃腺から熱があがってるみたいね…とりあえず冷やさなきゃ…ごめん、冷凍庫開けるよ」
「……」
櫻井はきついのか、頷いただけだった。
Aは冷凍庫から氷を取り出し、氷水にしてタオルを冷やした。
絞って彼の額に乗せる。
「冷たい…気持ちいい」
「お粥作ってあげるわ」
「う…A…」
「ん?」
「ごめ、ん……」
「だから気にしなくていいの。愛しき人の為だもの」
「俺も…愛しい……」
「フフ(笑」
Aはキッチンでお粥を作った。
「お粥、出来たわ。食べれる?」
「ごめ…ん。まだ食えない……寝たい…」
「そっか…私これからアフレコに行ってくるから、終わったらまた来るね」
「いい…のか?ほんとに……」
「うん、いいよ(笑。傍に居たいの。頑張って早く終わらせるから」
「ありがとう…」
「それじゃあもう一度タオル浸すね」
氷水に浸して絞り、再度櫻井の額に乗せた。
「それじゃあ行ってくるから」
「いってらっしゃい……頑張って…」
うんと言って櫻井の熱い頬を撫で、Aは仕事に向かった。ちなみに彼女は昼ごはんを食べてない。
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作者名:touko. | 作成日時:2020年12月27日 16時