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「で、今回はなんで入院になったんだよ。半年前にも入院したばっかだろ」
「私もね、良いよーって言ったんだけど、ちーちゃんがダメだーって。ちょっと倒れただけなのにね」
「ちょっとの意味って知ってるか?」
そら萩原の姉ちゃんも入院させるわけだ。目を離すと秒で体に負荷をかけるこいつはいっそ病院に拘束した方が安心できる。
まぁ、「ちょっとはちょっとだよ、何言ってるの?ぷーくすくす」とか言ってるのを見ると杞憂だったようにも思うが。入院期間延長させてやろうか?
青筋を立てる俺にも一切動じず、寧ろ「怒ったら脳の血管切れちゃうよー」なんて笑うAに、最早呆れたため息しか出ない。
毎度こうなのだ。いい加減入院報告くらいで不安になるのはやめようと思うのに、学ばない俺は毎度同じ不安を抱えて病室に足を運び、そして毎度その不安を粉々に砕かれて青筋を立てるハメになる。
……惚れた弱みというのは存外大きいものだ。ムカつくけど。
「取り敢えず無理はすんなよ。したら殺す」
「陣平くんこわーい」
思ってもなさそうにそう言うAはどことなく萩原を彷彿とさせて、やっぱり姉弟なんだなと馬鹿みたいに思う。
___生まれつき心臓が弱いというこいつは、昔からよく入退院を繰り返していた。
学校も休みがちだったAとは、学年は違うし教室の棟も違うしで、通う学校こそ同じでも、校内で顔を合わせることは滅多になかった。
顔を合わせても数日後にはまた病院に逆戻りで、Aに会いたかった俺は、小中高の放課後はほとんど病室で過ごした。周りがグラウンドで走り回っている間も、サッカーしようだとかの誘いを断って、Aのいる病室に走った。
子供ながら、どんだけ惚れてんだ、と自分に呆れたほどだ。
「それと、萩原にも伝えといてやれ。あいつに後からバレたら余計うるせーぞ」
「研ちゃんはダメだよ。警察学校で大変なのに、迷惑掛けられないもん」
「俺にかける迷惑はいいってか」
「うんっ!」
「おっし殴らせろ」
正直自分でもこいつのどこに惚れたか分からない。
最初は一目惚れだった。Aが纏う雰囲気とか、声とか話し方とか、あと、顔とか。
でも一緒に居る時間が増えて、こいつの内面知って、なんで惚れたんだと常々思う。
萩原以上に自由奔放で、マイペースで、図々しくて、年上としての威厳なんて欠けらもない、年下に「こいつ」呼ばわりされるような奴で。
……なのに、どうしてか。
いつまで経っても、こいつへの感情が無くならない。
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ミルクティー - 萩原&降谷妹の小説から飛んできました!すごく面白いです!!めっちゃ失礼かもしれないですが、景光の気になる人が喫茶店のオーナーだって知った瞬間に叫びました笑 更新頑張ってください! (2022年5月22日 10時) (レス) @page11 id: ae52256784 (このIDを非表示/違反報告)
音美 - …尊死しました、あのね、ガチで一瞬気絶しちゃったんですよ、この作品僕を殺しにかかってるんでは無いですか??? (2022年5月9日 23時) (レス) @page11 id: aed0770e75 (このIDを非表示/違反報告)
Topaz トパーズ - 更新楽しみにしてまってます!!! (2021年11月2日 5時) (レス) @page9 id: 09b28cb614 (このIDを非表示/違反報告)
颯貴@東方&文スト大好き人間(プロフ) - ぜっっっったいあると思いましたwwww初コメ失礼します!続き楽しみに待ってますね (2021年9月3日 21時) (レス) id: 61e081417a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年9月3日 15時