彼女に紹介されたお兄さんが同期だった場合の対処法【萩原研二】

兄というか父なんだけど ページ7

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「お兄さん！！お願いします！！妹さんと僕の交際を認めてください！！！」


「無理だ帰れ。お前には一生妹はやらん」


「そこをなんとか！！！」







まるで結婚式の前夜に彼女の実家に挨拶をしに来た彼氏のようなセリフを吐き、降谷ちゃんに全力で頭を下げるが、まぁ当たり前のように承諾しては貰えない。

なんでだよ降谷ちゃん。普段の俺の行いってそんなに悪かったか？
もう高校の時みたいに女の子だったら誰彼構わず声かけてないし、割と良い彼氏やってきたつもりだよ俺？そんなに俺の第一印象悪い？？いや確かに良いとは言わないけどさ。






なんか教官には「女の尻しか追いかけてない」みたいに言われてるけど、俺言うほどうつつ抜かしてないよね。女の子に話しかけたのなんて初日くらいじゃない？

てかあれは陣平ちゃんが消灯時間に顔面にでっかい青あざ作ったのが悪い。
お陰で俺まで叩き起こされて、早朝に出歩いてるのが女子寮の子にバレたんだ。「このことは黙ってて」ってめっちゃ頼み込む羽目になったのは今でも忘れない。


そういやあん時約束したハーゲンまだ奢って貰ってねぇじゃん。今日ねだろ。






まぁ兎に角、もし俺が女の子にだったら誰でも飛びつくって思われてるなら、是非とも陣平ちゃんに言質を取ってほしい。
あいつには割と惚気てるから、恐らく「あーあいつはキメェくらい彼女一筋だぞ」って苦虫噛み潰したみたいな顔で言ってくれるはず。頼むからあいつに話を聞いてくれ。俺はもうなにも言わない。







「んー？」


「あぁ、Aは気にしなくていい。それよりケーキ美味いか？」


「うん！おいい！」


「そうか、なら良かった」







降谷ちゃんに尽く一刀両断され、諦めの気持ちが芽を生やし始めた頃。ずっとケーキに夢中だったAちゃんが漸く周囲の状況に気づき、その可愛い顔を上げた。

普通ならあんな騒ぎの横で黙々とケーキを食べるなんて無理だが、声が聞こえていない分、彼女は周囲の状況を理解するのが少し遅い。
今も俺に叫ぶ気力が無くなったせいで再び葬儀場のような空気が流れ始めたところで、攻防戦が終わったとも知らず、彼女は「ん？」と顔を上げた。


しかし惚れた弱みというのは強い。キョトン顔が可愛いので全力で許しちゃう。ケーキおかわりして良いよ。







「降谷ちゃんも手話出来んだね」


「当たり前だろ。兄なんだからな」


「そらそうだわ。すまん」







目の前で手話を使う同期を新鮮な気持ちで眺める。
……あぁやっぱり、正真正銘、彼がAちゃんの兄なんだな。







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