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あー苦々しい出来事を思い出してしまった。
つい半月前の出来事に顔を顰めながらコーヒーを一口飲んで気持ちを落ち着ける。あん時肩貸してくれたのも、確か諸伏ちゃんと伊達班長だけだったんだよな。
今思うと俺の幼馴染冷たいな。いやまぁ前から分かってたことだけども。コケた俺を見て「邪魔だ踏むぞ」は流石に悪魔の所業すぎる。最近なんか降谷ちゃんに似てきたよね?
はぁ、と最近やけに仲のいい陣平ちゃんと降谷ちゃんの様子を思い出し、遠い目をする。今月でもう数回問題起こしてるとか、あと四ヶ月以上もあるのに先が思いやられる。
そんな俺の変化にいち早く気づくと、Aちゃんは不安げな表情で、「大丈夫?」「体調悪い?」と手話で聞いてくれた。悪魔の所業を思い出した後だと天使にしか見えない。
慌てて「大丈夫」「ありがとう」と返して、話題をそらすように別のことを聞いてみる。
「お兄さんの、名前は?」
知っとかなきゃ後々困るだろうと思って彼女に質問を投げかけた、まさにその時。
___チリンチリンと客の入店を知らせる音と、Aちゃんが親指と人差し指で円を作ったタイミングが、怖いくらいピッタリと重なって。
嫌な予感が胸を掠める俺の耳に、店員の「いらっしゃいませ!」の声が届いてきた。
「___れい、だよ!」
彼女の姓である【降谷】と、彼女の紡いだ拙い【れい】が頭の中で結びつく。
待って、俺、ヤバいかも。
コツコツと俺たちの席に迫ってくる革靴の音。まるで爆弾のタイムリミットを示すようなその音。
テーブルに差し込んだ影に冷や汗をかきながら顔を上げれば、そこには、こんな状況においても「相変わらず整っているな」と思わせる顔があって。
窓から差し込む太陽光が、彼の金髪を余すことなく輝かせる。
しかし俺を見下ろす視線だけは、絶対零度を彷彿とさせるようなそれで。
コーヒーの入ったコップを片手に硬直する俺に、すらっとしたモデルような風貌で現れた男は、徐にその形の整った唇を開いた。
「……降谷Aの双子の兄、降谷零です」
以後お見知り置きを___。Aちゃんには聞き取れないような小声かつドスの聞いた声が、俺を恐怖のどん底へと至らしめる。
え、今絶対その笑顔の下で夜道かなんかで俺を仕留めようとか考えてるよね?ついでにその死体を太平洋のど真ん中で捨てようとか考えてるよね??やめて俺まだ死にたくないよ???
___彼女の双子のお兄さんが同期の【降谷零】だと知った瞬間、俺は本気で死を覚悟した。
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ひなみ - 読み終わった後、偶然、コナンのEDにもなった「ジューンブライド〜あなたしか見えない〜」を聴いたんですが、この曲の歌詞が妙にこの作品に合っている気がして、またこの作品を思い出して泣いてしまいました。心に残る素敵な作品をありがとうございました。 (2022年10月16日 17時) (レス) id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
ひなみ - 読み終わった今も涙が止まりません…。まず二人が助からないと分かったところで大号泣、夢主が既に亡くなっていたと分かったところで大号泣、最後の写真で大号泣…。ずっとギャグだったから、こんな結末全く予測していませんでした…。 (2022年10月16日 15時) (レス) @page49 id: ba9ab70415 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 最後のイラストで涙が止まらなくなりました😭 (2022年6月23日 22時) (レス) id: 1cfa02e0c5 (このIDを非表示/違反報告)
ルリ(プロフ) - まさかの結末で涙が止まらない、、、 (2022年6月14日 19時) (レス) @page48 id: 2eb7e133f7 (このIDを非表示/違反報告)
milk - なにこれ、悲し過ぎない!もうtシャツの袖がびしょ濡れになりました (2022年5月26日 0時) (レス) id: b9832e8e21 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:無糖 | 作成日時:2021年7月25日 15時